限定公開( 2 )
29日発売の週刊誌「AERA」(朝日新聞出版)が、「裏方からアイドルへの華麗な進化」と題し、アイドル化が進む声優業界の特集を展開している。
カラー4ページにわたる今回の特集。冒頭は、2日間で延べ3万2,000人を動員した神谷浩史と小野大輔のイベント「DGS EXPO 2016」(6月25、26日/さいたまスーパーアリーナ)の様子をレポート。文中にもあるように、「キラキラの白い衣装で登場」「トロッコに乗ってアリーナを一周」……など、声優もアイドルさながらのライブパフォーマンスをするようになって久しいが、記事にもあるように、「彼らはアイドルではない。『声優界』のトップスターだ」。
このような表舞台にも立つ声優、いわゆる“アイドル声優”の存在だが、1990年代に台頭してきたと言われている。記事によると、90年代初期のアニメ誌は、今とは比べ物にならないほど声優に関する記述が少なく、あくまでも“裏方”に近いニュアンスを保っていたとか。
しかし、90年代に突入すると、林原めぐみ、椎名へきるといったアイドル声優が爆発的な人気を集めたり、また子安武人、関智一らの「Weiß kreuz」といったアイドル声優ユニットも登場。彼らの存在が、今にも続くアイドル声優の源流となっている。
そんなアイドル声優について、ライターの斉藤貴志氏は記事中で、「アイドル声優とは言われても、やはりトップの人気声優たちは本業やラジオパーソナリティーとしてのプロフェッショナルな部分を評価されている。単純に見た目がカッコいいから支持されているわけではないのです」と語っている。
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前述の神谷と小野はそれに十分当てはまると言えるが、その一方で、声優のアイドル化が進んだ結果、「演技だけでなく、ルックスや若さも重視されることに」「声優本来の実力は劣る」――という指摘も後を絶たない。
「AERA」の特集では言及されていないが、声優業界内では、田中真弓が「アイドル=若いということ。アイドル声優をやれてるうちに、自分の50〜60歳を想像できないとダメ」と、90年代にアイドル声優として活躍していた桑島法子も「アイドル声優は旬を過ぎたら使ってもらえなくなる」と警告したり、さらには前述の林原めぐみも「安くてかわいいから使われるような、薄利多売になってほしくない」と発言。つい最近にも、浅川悠が「(声優を)選ぶ側は一体全体芝居が欲しいのか人気のあるカワイコちゃんがほしいのか最近はなんだかブレブレな雰囲気を感じる時もある」とブログで物申し、注目を集めた。
今回、「AERA」のインタビューに応じた古谷徹も、今の声優について「声優が武道館をいっぱいにしたり(中略)するなんて、まるでアイドルですよね――ちょっとうらやましい(笑)」としつつ、「でも、声優としての実力ではなく、本人のルックスや人気ありきで作品のキャスティングが決まる現象は本末転倒」と指摘。「アイドル活動をしなくたって、メインキャラクターを演じたら家が建つくらいの評価を得てしかるべき(笑)」と語っている。
そんな意見が絶えないアイドル声優だが、「AERA」の記事中には、90年代のアイドル声優ブームの背景には、92年に声優の出演料が引き上げになった影響もあると考えられる――という記述がある。
なんでも、当時ノーギャラでも出番が欲しい新人たちによって、出演料の値崩れが発生。そこで、声優のランク制が導入され、結果、ベテランより出演料の少ない新人たちにチャンスが巡り、売り出すためにアイドル化が進んだというのだ。代々木アニメーション学院の声優学部長・洪成一氏は、記事で「アニメ界にとって大切な声優を守るために打ち出した戦略が、積極的に声優をアイドル化することでした」と語っている。
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需要があるからこそ、盛り上がり、加速しているとも言えるアイドル声優。業界内外で指摘もある中、今後、さらに声優のアイドル化が進むのか――注目していきたい。
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