「アニメプロデューサー」という仕事は“危ない人”ほど向いている

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2016年09月01日 20:02  新刊JP

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『「おそ松さん」の企画術』の著者、布川郁司さん
1977年に発足し、最近では『おそ松さん』をはじめ、『NARUTO−ナルト−』『うる星やつら』『幽☆遊☆白書』など名だたるアニメを制作してきたスタジオぴえろ。

その創業者である布川郁司さんは近著『「おそ松さん」の企画術』(集英社刊)の中で、ヒット作を生み出すための企画術、アニメーション業界の歴史、そしてコンテンツビジネスの未来と課題をつづっている。

布川さんへのインタビュー最終回はアニメプロデューサーに向いている人、そうではない人、布川さんが出会ったアニメ業界のすごい人についてお話を聞いた。
(取材・文/金井元貴)

■アニメプロデューサーに向いているキャラは「松野十四松」

――アニメプロデューサーに向いているのはどんな人だと思いますか?

布川:大風呂敷を広げられる人ですね。これは重要な素質です。それを仕舞うことも大事なのですが(笑)

――布川さんは徹底的に大風呂敷を広げるタイプですか?

布川:昔はそうでした。「このアニメはヒットする」なんて誰にも分かりませんから、そこは熱意を見せて、熱病みたいに伝染させていく。そうなると、周囲の人や取引先も「ここまで言うのなら、大丈夫だろう」と飲むしかなくなるわけです。

例えば、読売広告社の木村京太郎さんというプロデューサーは『おそ松くん』をはじめたくさんの作品でご一緒しましたが、彼は筆ペンで企画書を仕上げていたんです。ものすごいインパクトですよ。

では、彼と同じように筆ペンで書けばいいのかというとそうではなく、「この企画をやらせてくれ!」という熱を伝える手段の筆ペンなんです。そういう熱を伝えるのがプロデューサーなのだろうなと思いますね。

――『おそ松さん』に出てくる六つ子の中でアニメプロデューサーに向いているのは誰だと思いますか?

布川:これは難しいね…。しいてあげると、十四松かな。危ないけれど(笑)。でもね、危ない人の方がいいのかもしれないです。昔はすごいプロデューサーであればあるほど、「関わらない方がいいよ」なんていう噂が流れたくらいですから。

仕事ができることと、危ないことは、紙一重なんですよね。弁が立っていて引き受けるくらいの度胸がある人でないと、仕事を任せることはできませんよ。

■布川さんが「これはすごい」と思った雑誌の編集長とは?

――布川さんから見て、アニメ業界の中で「これはすごい」と思う人はいますか?

布川:たくさんいます。集英社の「少年ジャンプ」歴代編集長にはすごい思い出がいろいろありますが、一番すごいと言えば、1978年に創刊されたアニメ雑誌『アニメージュ』の初代編集長である尾形英夫さんは、本当に危ないオヤジでしたよ。もともと『アサヒ芸能』の編集長でしたから、裏社会への造詣も深い(笑)。

ただ、あの人がいなかったら宮崎駿さんも高畑勲さんも発掘されなかったと思いますし、雑誌内にアニメキャラのグラビアページを作るなど、アニメキャラにファンがつく時代がくることを事前に察知していました。

当時は「そんな時代、来るのかな」と思っていたものですが、今やキャラクタービジネスはアニメ産業においても主要ビジネスの一つですからね。



――ものづくりの現場で、よく「予算がない」という言い訳が飛び交うときがあります。その言い訳をどうクリアしていけばいいのか悩んでいるのですが、アドバイスをいただけますか?

布川:「予算がない」って実はスタジオぴえろではあまり出てこない言葉です。逆に言えば、スケジュールを言い訳に使っているのは聞きますね。お金はもう決まっているわけで、その中でやりくりをするしかない。これが前提です。

逆にスケジュールがタイト過ぎると、1本の作品のクオリティを維持するのにも難しいことになる。そうなると、時短の考え方ではデジタルに行き着くしかないんです。

最近のアニメーターはタブレットで絵を描くことが当たり前ですが、ベテランの方になると鉛筆でしか描けないという人もいるので、ちょうどその転換期なのだと思いますね。

――では、この『「おそ松さん」の企画術』をどのような人に読んでほしいとお考えですか?

布川:もともと企画術というテーマで何か書きたいと思っていたところに、『おそ松さん』のヒットが重なって本を出版させてもらうことになったのですが、やはりメディアの世界は面白いし、これからもっと面白くなっていきます。

だからメディアに興味を持っている人や、自分で良い企画を立ち上げたい、人を動かす企画を作りたいという人には、ぜひ読んでほしいですね。

(了)

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  • そうなるとスタジオジブリの鈴木敏夫さんは“危ない人”なのか。
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