失敗しないからこそ恐ろしい。アイデアを陳腐にさせる「鉄板病」

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2016年09月05日 22:02  新刊JP

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『鉄板病』(NHK出版刊)
「それって鉄板だよね」

まるで鉄板のようにガチガチであることから、「そこを押さえておけば間違いない」「確実」という意味で使われる「鉄板」。

元々は堅いレースのことを「鉄板レース」と呼ぶギャンブル用語だったが、一般の人も使うようになった。

会話をするとき、アイデアを生み出すときなど、さまざまな場面に「鉄板」というのはあるものだ。

しかし、確実であるがゆえに鉄板に寄りかかり過ぎてしまい、鉄板ばかりを求めてしまうことはないだろうか。

プロデューサーのおちまさと氏は2007年に著した『鉄板病』(NHK出版刊)で、「鉄板」なものだけを求め、「鉄板」でいたいと過度に欲する症状を「鉄板病」と名付けている。

■鉄板に寄りかかることの恐ろしさ

「鉄板病」に陥ってしまってはいけないのが、「企画を立てる人」だ。

例えば、テレビのバラエティ番組を見ていても、ある局が面白い番組をつくり、ヒットさせると、他の局も似たような番組をどんどん制作し、放送していくということがある。

これはテレビの世界だけではない。雑誌やウェブの企画もそうだろう。

でも、マーケティング的な視点から考えていけば、鉄板に寄っていってしまうのは仕方ないと思う人もいるのではないか。

しかし、おち氏は「マーケティングと鉄板病は似ているようでまったく別だ」と言う。

■「マーケティング」と「鉄板病」の違いとは?

おち氏が言う「マーケティング」と「鉄板病」の違いは一体何か。本書の中では次のようなコメントを使ってその違いを説明している。

A「映画で、3文字のタイトルって結構あたるんですよ」
B「3文字のタイトルじゃないと、制作できませんよ」

Aはマーケティングだ。傾向を分析し、どうせなら受け入れられやすいあたりを狙うというスタンスである。一方のBは、事前から「3文字」と決まってしまっている。映画の色がどんなものであっても、最初からメジャー系の内容が求められる。それが鉄板病なのだ。

確かに筆者自身、記事の内容を考える際に、最初から「このジャンルがヒットしているから」「こういう書き方が多いから」など、内容を先に考えず、鉄板から物事を考えてしまうことがある。

こうして似たような企画ばかりが生まれ、深みがない、メッセージがないと言われてボツになってしまう。

■企画とは「未来に波を起こす『予言』である

おち氏自身、企画というのは「未来に対して波を起こす『予言』のようなもの」と述べ、「裏打ちはなくても、イケるだろうと思える面白さが大事」と語る。

鉄板が蔓延しているのであれば、鉄板ではないもの、逆鉄板があれば面白くなるのではないか。そこにこそ、新しく面白いものが生まれていくはずだ。

ついつい「失敗したくない」と私たちは考えてしまう。また、周りの人が鉄板病になっているなか、一人で逆鉄板をつき通すのは生きにくいことかもしれない。

しかし、新しいもの、面白いものをつくるという「志を高く持つ」こと、それを曲げずに続けることが、新しいものをつくることにつながるのだろう。

2007年に出版された『鉄板病』だが、10年近く経った今でも企画制作者に突き刺さる言葉が満載だ。

(新刊JP編集部)

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