マイタケ・エリンギ・シイタケなどのさまざまな細胞を用いて研究
画像はリリースよりマイタケから発見された新タンパク質「ナカノリ」が、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることを、理化学研究所の国際共同研究グループが発表しました。ナカノリは、「脂質ラフト」と呼ばれる細胞膜上の脂質構造に結合するタンパク質で、今回の発見が、より小分子量の抗ウイルス薬の設計や、脂質ラフトのメカニズム解明につながることが期待されています。
脂質ラフトとは、スフィンゴ脂質とコレステロールを主成分とした直径20〜100ナノメートル(1nmは10億分の1m)の細胞膜上にある微小な領域。ウイルスやバクテリアの感染において重要な役割を果たしていると考えられていますが、実態はよく分かっていません。今回の研究では、脂質ラフトの構造、動態、機能を明らかにするため、特異的に結合するタンパク質を探索し、そのタンパク質を使って脂質ラフトを標識するという手法を試みました。
研究では、人工的に脂質ラフトを作製し、マイタケのほかエリンギ、シイタケなどさまざまな細胞の抽出液を用いて、結合するタンパク質を探しました。その結果、マイタケの抽出液から新しいタンパク質が発見されました。いかだを意味するラフトに結合することから、民謡木曽節の一節「木曽の中乗り(いかだ乗り)」にちなみ、ナカノリと名付けられました。
インフルエンザウイルスの出芽段階を阻害
脂質ラフトは、インフルエンザウイルスやエイズウイルスなどの感染の場とも考えられています。そこで、インフルエンザウイルスに非常にかかりやすいMDCKという細胞を培養し、超解像顕微鏡でウイルスが出芽する様子を観察しました。すると、ウイルスはナカノリで標識される脂質ラフトの縁から出芽してくることが明らかになったのです。
また、高濃度のナカノリの下では、MDCK細胞のインフルエンザ感染が抑えられることも判明。感染初期、後期、全期間の細胞にナカノリを加えて、ウイルスの増殖率を調べたところ、感染後期の増殖率が20%弱と最も低く、感染後期の出芽をナカノリが阻害していることが示されました。
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ナカノリの脂質結合部位を特定するなど、解析が進めば、より小分子量の抗ウイルス薬設計につながることも期待されます。脂質ラフトは、インフルエンザウイルスだけではなく、エイズウイルスやエボラウイルスの感染においても、重要な役割を果たしているとみられ、研究グループでは今後、これらのウイルス感染にもナカノリが効果を示すのか、研究を進める予定です。(菊地 香織)
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