2型糖尿病のインスリン治療に関する意識調査も同時報告
奈良県立医科大学糖尿病学講座教授 石井均先生糖尿病患者さんの約9割は、インスリン治療に関する説明を受けても「今の治療で大丈夫」と考えているとの調査結果がでました。2型糖尿病の患者さんに対しインスリン治療の導入を実施している医師173人と、インスリン治療の説明を受けたけれども治療を開始していない148人、インスリン治療開始から1年以内の2型糖尿病患者さん50人を対象に行われた調査です。
この調査を行った日本イーライリリー株式会社と日本べーリンガーインゲルハイム株式会社は、「前向きにインスリン治療に取り組むための患者と医師のコミュニケーション」と題したプレスセミナーを10月19日に開催。同セミナーでは、奈良県立医科大学糖尿病学講座教授の石井均先生による講演が行われ、同時に「インスリン治療に対する意識調査」の結果も報告されました。
インスリン治療に対する患者の抵抗感の払拭は、医師と患者のコミュニケーションがカギ
「2型糖尿病のインスリン治療に関する意思と患者さんへの意識調査」では、インスリン未治療の患者さんは、治療や注射に対する負のイメージや、社会的、対人的な影響といったさまざまな不安を抱えているという結果が報告されました。一方、医師は患者さんがインスリン治療の重要性を理解してくれず困っているという結果も明らかにされました。
インスリン導入時の心理的障壁について総合的に調査した日本で初めての科学的な実態調査である「DAWN JAPAN調査」が2005年に発表されています。同調査の中で、医師を対象としたインスリン導入のタイミング(HbA1cの値)に関する質問では、「自分が患者の場合にインスリン治療を考えるHbA1c」の値は7.7%、「患者にインスリン治療を考えるHbA1c」の値は8.3%、「実際に患者にインスリン治療をすすめるHbA1c」の値は9.2%で、医師もインスリン治療の導入タイミングでは、理想と現実のギャップがあることが示されています。
2型糖尿病患者さんが、インスリン治療を勧められると70〜85%の人が抵抗感を抱くといいます。インスリン治療は、通常緊急性がなく、できるだけ考えたくない治療であり、患者さんはなるべく開始時期を引き延ばしたいという心理が働くからだと考えられますが、インスリン治療に対する患者さんの心理は次の5つに分類されます。注射に対する負のイメージ、社会的・対人的影響、糖尿病の自己管理に対する後悔、インスリン治療に対する負のイメージと正のイメージです。
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DAWN JAPAN調査では、インスリン治療を開始した患者さんは、このうち「血糖コントロールがよくなる」「体調がよくなる」「合併症が防げる」といったインスリン治療に対する正のイメージを持っていたことも報告されています。また、インスリン治療の開始率に関する調査でも「すぐに始めようと思っている」と答えた人は6か月間で97.6%、「始めるかどうか迷っている」とした人は45.3%、「まったくする気はない」という人でも6か月後には25.8%の人がインスリン治療を開始しています。患者さんの気持ちは変化するため、医師はあきらめずに説明することが大切だということを示す結果です。
「早い時期にご自分の状態を納得し理解していただいて、必要な時期にインスリン治療を開始するお手伝いをしたいと思っています。ただ治療を勧める側として患者さんが抱く不安を認識することが大切だと考えています。例えば、取り戻せない過去への後悔、現在感じる嫌さや面倒さ、将来の可能性が閉ざされる不安です。こうした根本的な生きていくことへの不安を解消し、前向きな治療を考えてもらうためには、患者さんと医療者とのコミュニケーションが重要だと思います」と石井先生はいいます。
「今の治療でも大丈夫」と考える患者さんに、治療に対して前向きになってもらうためには、「なぜ今のままで大丈夫と考えているのか」という理由を問いかけ、患者さんの不安を取り除くようなコミュニケーションが求められます。(QLife編集部)
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