「認知機能リハビリテーション」と「個別型援助付き雇用」のセットに期待
画像はリリースより人にとって就労することは自己のアイデンティティになり、社会の一員としてどのように仕事とかかわっていくかは、重要な位置を占めています。重い精神障害を持つ人にとってもその意味は同じです。2006年に障害者雇用促進法が改正され、ハローワークにおける精神障害を持った人の就労者数は、2006年度の7,000人から2015年度には40,000人近くまで増加しました。しかし、その就労者の中に、統合失調症や双極性障害などの重い精神障害を持った人は必ずしも多くなく、その就労は未だに厳しい場合が多いのが現状です。
近年、重い精神障害を持つ人に対してより良い就労環境をもたらす支援として国際的に注目されているのが、「認知機能リハビリテーション」と「個別型援助付き雇用」をセットにしたサービスです。認知機能リハビリテーションは、記憶力や集中力、物事を段取りよくまとめる力などの認知機能の向上を図るプログラム。一方の個別型援助付き雇用は、就労支援員が利用者の個別のニーズや好みに合わせて利用者と二人三脚で就職活動の支援を行うものです。
この認知機能リハビリテーションと個別型援助付き雇用をセットにしたサービスプログラムの実施が従来型就労支援プログラムと比較して、費用対効果の優位性があることを、国立精神・神経医療研究センターが世界で初めて明らかにしました。
就労率は43%も高く、平均コストも約15万円安く
今回の研究では、医療機関からの「仲介型ケアマネジメント」と就労準備性の向上に重点をおいた「トレーニング型の従来型就労支援」という従来型就労支援を比較対照とし、認知機能リハビリテーションと個別型援助付き雇用をセットにしたサービスの効果と費用対効果を検証する臨床試験を実施しました。
その結果、従来型就労支援と認知機能リハビリテーション・個別型援助付き雇用のセットにおける就労率を比較すると、後者の方が就労率は43%も高い結果が得られました。また、支援にかかる1人あたりの平均コストは、セットサービスのほうが14万7,533円ほど安い結果となりました。重い精神障害の人が多くの就労機会と長い就労期間、そして認知機能の改善を果たし、さらには費用も安くなったのです。
|
|
現代の医療施策において、新しいサービスの制度設計や改正の時には費用対効果の算出が非常に重要となります。今回の研究成果が、重い精神障害を持つ人の就労環境の改善と、費用対効果の向上につながることが期待されます。(弥生実空)
関連リンク
⇒元の記事を読む