家事シェアに大切なのは納得感の持てるコミュニケーション 〜男女共同参画局発のワークショップ〜

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2016年10月31日 09:02  MAMApicks

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10月23日の日曜日、内閣府男女共同参画局が夫婦の家事シェアをテーマにした「夫婦が本音で話せる魔法のシート ○○家作戦会議」ワークショップを開催した。夫婦の役割シェアのコミュニケーションツールとして開発したというこのシートを活用し、生活経済ジャーナリスト・キャリアコンサルタントの和泉昭子氏と、家事シェアの活動をするNPO法人 tadaima! 代表の三木智有氏が講師を務めた。

■「夫婦が本音で話せる魔法のシート」ってどんなもの?
シートはカジュアルなデザインで気軽に記入でき、<Part1:素直な気持ちを伝えてみよう><Part2:2人の今を再確認!><Part3:「家のこと」のシェアの仕方を考えよう><Part4:3年後の自分たちを想像してみよう>という構成で、A3二つ折り表裏で完結する。

内閣府男女共同参画局のサイトからPDFでダウンロードできるので、すぐにでも利用できる。
http://www.gender.go.jp/public/sakusenkaigi/index.html


一見なんだか当たり前そうだし、「魔法のシート」だなんて言われてもね……と思いそうになるのだけれど、講師のふたりをはじめ、今どきの夫婦事情に詳しいメンバーでツールの制作検討が行われているだけあって、現状をよく考えて作られている印象を受けた。

■「え?そう思ってたの?」という発見
今回のワークショップの参加者は夫婦単位で、家族構成も仕事のスタイルもさまざま。講師の和泉氏の「単に時間を配分ではなく、お互いの満足度が高いことが大切」、三木氏の「家事の満足度は、夫婦でどれだけコミュニケーションをとれているかで変わる」という話をきっかけに、参加夫婦が「魔法のシート」に取り組んだ。

夫婦それぞれ別々に自分のシートに書き込んでから見せ合って話をするスタイル。なんとなく真剣モードで始まったものの、夫婦で話す段階になって少し雰囲気もやわらかくなってきた。

例えば、<Part2:2人の今を再確認!>では、「今の自分の定番の時間の使い方」をグラフに配分してから、「理想の時間の使い方」を書いてみるという作業。

「家事に使える時間と睡眠時間を増やしたい」という妻もいれば、「子どもとの時間を増やしたい」という夫もいたり、人それぞれ。

実際に夫婦でこういうワークショップに参加できているだけで十分コミュニケーション度も意識も高そうなのだけれど、それでも実際にやってみると、「夫が子どもとの時間を作りたいと思っていたとは知らなかった!」等の発見があったようだ。

<Part3:「家のこと」のシェアの仕方を考えよう>では、自分が重要だと思っている家事を書き出し、各家事の負担が、妻と夫どっちにどの程度あると感じているか、をマークしていく作業。

家事を一緒にやることが多いという妻からは、「意外と夫が負担に思っていないことがわかって安心した」という声があり、妻の側には「頼んでやってもらうこと」への言いづらさや重さがあることが見えた。そういう気持ちが楽になるというだけでも、十分効果的だ。



■「家事の断捨離」も「お金で解決」も自分たちの納得感が重要!
家事の負担感や、どうしても手を抜きたくないもの・手を抜いてもいいもの、は、家庭によって違うだけでなく、まず、夫婦間でも違うもの。一律に、○○は手を抜けばいいとか、○○を買えばいい、というものでもない。

お互いが納得して、これは手を抜こう!と思えたり、これはお金をかけてでも省力化しようか、と一致すると気持ちは軽くなる。

あるご夫婦は、朝食を作るのが負担でお互い重視してないからいっそ作るのをやめよう!という結論に。調理しないで食べられるものですませる作戦だ。またあるご夫婦は、ベッドのシーツ替えの作業負担を減らすためにボックスシーツに変えよう!と、お金で解決する作戦。ささやかなことのようだけれど、自分たちの感じている負担感に合った省力化の道が見つかったのは、大きな前進のはずだ。

厳密で客観的な指標ではなく、あえて100%自分の主観で書いた負担感を見せ合うことで、お互いの「面倒くささ」や「手放したくないもの」が何なのかが整理できるというわけだ。

■家の中のことを外で話す習慣はプラスになる
夫婦っていうのは意外と面と向かって家の中のことを気軽に話しづらいようなところがある。照れだったり、今さら感があったり、けんかモードになりそうだったりして避けがちだ。こんな風に半ば強制的に「場」を提供されるのは、ひとつのきっかけにはなるだろう。

おそらく人前で家の中のことを夫婦で会話するのってそれだけで敷居が高い。ワークショップも、全体が和気あいあいというより、それぞれの夫婦が静かに話をしている雰囲気。でも、夫婦の「内」の問題にしがちなことを、ある程度よそ行きモードで「外」で話すことが、自分たちのことを俯瞰するいい機会になっている印象を受けた。

■なんでこんなツールが?
国が夫婦のコミュニケーションにまで口出しするの?という過剰な面倒見の良さに違和感を覚えたり、こんなシートを作る前にとりあえず保育園作って!と思ったりするかもしれない。その気持ちはもっともだと思う。でも、男女共同参画局発ということを考えれば、啓発の一環としてこんなツールはなかなか面白いな、と思うのだ。

どんなに制度だけが整っても、その制度を有効活用できるかは当人の意識次第。夫婦で性別役割分業に寄らない役割シェア意識が持てないと、家の中までは変わらない。

「家事を夫が○時間やらないとだめ」とかそいう数値目標を掲げるのではなく、男性だけに「もっと家事を!」と呼びかけるのでもなく、さまざまな家庭の事情、個人によって価値観が違うのを大前提に、お互いの負担感を確認しあうことに注目しているのは、とても細やかなアプローチだ。


ワークショップの第2部はキッチンに場所を変えて、作りやすい料理としてポトフの調理実習と昼食会が続いた。夫の皆さんの日頃の調理の習熟度は非常に幅が広く、夫婦並んで包丁を握る雰囲気もさまざま。座学のワークよりも普段の姿が出ていて面白い。本当に、夫婦のスタイルって色々だ。

そのさまざまなスタイルに一律の指標を示すのではなく、家事シェアに役立つコミュニケーションツールを提供する、という取り組みなのだろう。

三木氏の「負担の押し付け合いにしないことが大切」という表現は印象的だった。夫婦って近すぎて意外と互いのことを知らない。知っているつもりだけど、平気で違ったりする。相手の苦手感や負担感、こだわりなどを確認できたら、「頼む」とか「手伝う」というところから一歩進んで自分たちに合った解決策を見つけられるかもしれない。

■負担感の共有が第一歩になる
ワークショップのような場ではなく、このシートをダウンロードして、家でふたりでやる場合は、「ほら、そっちは自由時間がある!私は全然ないんだから!もっと家事やってよ!」というような戦闘モードになってしまう可能性もありそうだ。こういうシートでコミュニケーションを促されること自体に拒絶反応を示す人もいるだろう。

だから、「話し合いましょう」みたいなモードではなく、ある程度軽い気持ちで、「こんなシートあるんだって?」と、話題のひとつとしてやってみたり、シートの一部だけやるなど、ライトな使い方でも十分だろう。

家事のシェアとか、なんとなく話しづらいし、けんかになるのも面倒……というのがリアルな日常。とりあえず、シートを印刷してリビングの片隅に放置しておく、なんてことから始めてもいいかもしれない。

狩野さやか
Studio947でデザイナーとしてウェブやアプリの制作に携わる。自身の子育てがきっかけで、子育てやそれに伴う親の問題について興味を持ち、現在「patomato」を主宰しワークショップを行うほか、「ict-toolbox」ではICT教育系の情報発信も。2006年生まれの息子と夫の3人で東京に暮らす。リトミック研究センター認定指導者資格有り。

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