離婚後も元夫の実家に住み続けたら「養育費」の減額要求された! そんなのアリ?

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2016年11月01日 10:02  弁護士ドットコム

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「離婚した後、子どもの養育費を1度ももらっていない」。そんな友人を心配する相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。


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相談者の友人は結婚当初から夫の実家で12年間同居していましたが、夫の浮気が原因で離婚。夫は実家を出て、浮気相手と生活しています。一方友人は、経済的な理由から今も別れた夫の実家に住み続けています。友人と別れた夫の間には小1と中3の子どもがおり、離婚の際に月3万円の養育費の支払いを約束したそうです。


ところが、夫は「自分の実家に住んでいるのだから払う必要がない」と、これまで1度も養育費を支払ったことはありません。それどころか、「実家を出られないほど金がないなら、親権変更の調停を申し立てる」と主張しているそうです。


「実家にいるから養育費は不要」という元夫の主張は認められるのでしょうか。友人が養育費の支払いを夫に請求できるとしたら、どのような手続きが可能なのでしょうか。齋村美由紀弁護士に聞きました。


● 元夫の主張、認められるのか?


まず、元夫の「自分の実家に住んでいるのだから払う必要がない」とう主張について考えてみましょう。


養育費は、両親間で分担する未成熟子(経済的に自立できていない子)の生活費です。そして、親の未成熟子に対する扶養義務は、自己と同程度の生活を保持させなければならない生活保持義務です。そこで、養育費の金額は、両親の収入や生活状況などの諸事情を総合的に考慮して決めることになります。


今回のケースの事情としては、「元夫の実家にいる」という事情があるので、住居費について特別の考慮を必要とするのかということが問題となります。


つまり、友人は元夫の負担により住居費を免れているように思われるので、この点を考慮すべきなのかという問題です。


裁判所の判断は、事案によって分かれていますが、今回のケースでは次のような事情があります。


(1)元夫が現実の支出(家賃やローンの支払い)をしているわけではないこと、(2)元夫は浮気相手と生活するために実家を出たことから離婚に至っているので有責であること、


こうした事情を考慮すると、住居費相当額を減額するという判断にはならず、約束した養育費を請求することが可能であるといえます。


● 払ってもらう手段は?


次に、「実家を出られないほど金がないなら、親権変更の調停を申し立てる」という主張を検討しましょう。


「親権者を誰にするか」ということを考えるにあたっては、父母の経済的家庭環境も比較の材料のひとつになるので、元夫の言い分も理由があるとも思われます。


ただ、親権者を変更する場合には、既に指定されていた親権者(相談者の友人)による監護の実績を踏まえて、変更すべき事情があるかないかを検討すべきです。経済的な面だけを取り上げて、直ちに親権を変更されることはありません。


最後に、養育費を支払ってもらうための方法ですが、口約束であれば、執行力(強制的に取り立てること)がないので、調停を申し立てる必要があります。


一方で、調停や審判で定められたのであれば、相手方の給与などを差し押さえといった強制執行手続が可能です。


養育費などは生計維持にとって不可欠ですから、支払いの一部に不履行があったときには、将来の分についても強制執行を開始することができます。




【取材協力弁護士】
齋村 美由紀(さいむら・みゆき)弁護士
平成21年弁護士登録 広島弁護士会所属 離婚、相続、交通事故など一般民事事件を中心に取り扱う。

事務所名:山下江法律事務所
事務所URL:http://www.law-yamashita.com/


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