ヒモ夫と姑名義の「住宅ローン」を肩代わり、離婚するから返して!【小町の法律相談】

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2016年11月04日 07:41  弁護士ドットコム

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夫との離婚を考えている女性が、夫と義母の家のローンを一括返済してあげた費用は、返してもらえるのか? と、Yomiuri Onlineの「発言小町」に相談を寄せました。現在、価値観の相違により、離婚を考えているそうです。


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繰り上げ返済したのは、結婚7年目に「夫の親が認知症になり同居することに」なったことがきっかけでした。「介護費用がどこまでかかるわからず、節約のために私の口座(結婚後)から夫・夫の母の家のローンを一括返済」してしまったといいます。今から3年前のことです。


しかも、「ローン残額●百万円だから夫の口座に入れて」と夫に言われるままに振り込んだだけで、名義の書き換えもしていません。そこで、「離婚後、養育費など踏み倒されそうなのでこのお金は返してもらいたいのですが無理でしょうか。夫の貯金(の金額)は教えてもらえません」と聞いています。


レスには「なんで返済したの?」などとトピ主さんが良かれと思ってした対応をいさめる厳しい意見も並び、「50のおっさんがヒモになるとは思いもしませんでした」と、悔しげなトピ主。離婚時、繰り上げ返済した分は、返してもらえるのでしょうか? 河原崎弘弁護士に聞きました。


(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「繰り上げ返済したお金を夫から返してもらえるか。」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/1021/782195.htm )


● 「財産分与を請求するのが良い」


妻が夫の口座に振込んだ行為は、法律上は「贈与」となります。あるいは、後で返済するとの約束があったのであれば「貸金」でしょう。しかし今回のケースは、返済の約束はなかったようなので、「贈与」にあたると考えられます。


夫婦間の契約は取消できます(民法754条)。婚姻期間中であれば、この契約(贈与あるいは貸金)を取り消し、金銭の返還請求することができます。


しかし、夫婦関係が破綻状態ある時は、取り消しできません(最高裁昭和42年2月2日)。裁判所は、婚姻中とは「形式的にも実質的にも婚姻が継続していること」と判断しています。トピ主さんは現在、「離婚を考えている」という状況にあり、民法754条に基づいて契約を取り消すことは難しいと考えられます。


そこで、離婚時に、財産分与請求をしたら、いかがでしょうか(民法768条)。婚姻中に、夫婦で協力して築きあげた財産は、名義にかかわらず夫婦の共有財産であるとして、それぞれの貢献度に応じて公平に分配します。一般的には、2分の1となることが多いのですが、高額な資産の場合などは、それぞれの貢献具合などの事情が考慮されることもあります。


このように、「支払った金額をすべて返して欲しい」というトピ主さんの希望は、法的には難しいと言わざるを得ません。婚姻中には、将来の離婚を予想して行動することはないと思いますが、多額の金銭のやりとりについては、不本意な結果になる可能性があるのです。




【取材協力弁護士】
河原崎 弘(かわらざき・ひろし)弁護士
昭和48年、弁護士登録。平成16年〜平成22年、都内の法科大学院教授。現在は「第二東京弁護士会」(苦情相談委員、紛議調停委員)、渋谷区法律相談委員。著書・監修に「ストーカー撃退マニュアル」「離婚の法律相談」「会社書式大全」「相続の諸手続きと届出のすべてがわかる本」「遺族のための葬儀法要相続供養がわかる本」

事務所名:河原崎法律事務所
事務所URL:http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/


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