糖尿病患者さんは「低血糖」とどのように付き合うべきか

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2016年11月15日 18:01  QLife(キューライフ)

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糖尿病の“特効薬”インスリンと命を脅かす“低血糖”


京都医療センター 糖尿病センター 村田敬先生

 毎年11月14日は世界糖尿病デーです。厚生労働省の「2014年患者調査の概況」によると、日本国内における糖尿病患者の数は、316万6,000人とされています。この数は、通院している患者さんの数であり、糖尿病が強く疑われる人は約950万人に上ると、厚生労働省の「2012年国民健康・栄養調査結果」で発表されています。

 世界糖尿病デーを翌週に控えた11月11日、日本メドトロニック株式会社は都内でメディアセミナー「糖尿病治療における低血糖予防の重要性〜夜間低血糖と無自覚性低血糖の診断と予防」を開催。京都医療センター 糖尿病センターの村田敬先生、1型糖尿病患者で任意患者団体「マイスター・ジャパン」の共同代表でもある能勢謙介さんによる講演が行われました。

 現在、糖尿病の治療にはさまざまなお薬が使用されています。中でも良く知られるのが「インスリン製剤」でしょう。インスリンが初めて製剤化されたのは1922年のこと。「それまで発症したら助かるすべがなかった1型糖尿病の患者さんを救えるようになりました」と村田先生。また、失明や透析、足切断など、糖尿病合併症の減少に寄与しました。「インスリンは血糖値を確実に低下させる効果を持つ糖尿病の“特効薬”ともいえるお薬です」(村田先生)

 しかし、その一方でインスリンには「低血糖」というリスクも。低血糖はインスリンなど血糖を下げるお薬によって、血糖が下がりすぎることで起こります。その症状は発汗やふるえ、めまい、集中力の低下、けいれん、一過性の片麻痺など多岐にわたります。そして、時には症状が現れず、その結果そのまま死に至るケースもあると村田先生は語ります。「頻繁に低血糖を繰り返していると、自覚症状が失われることがあります。これは『無自覚性低血糖』と呼ばれ、低血糖の前兆がわからないため、突然意識を失ったり、時には命の危機に陥ったりする可能性もあります」(村田先生)

能勢さん「低血糖は自然災害と同じようなもの」

 命にかかわるリスクをはらむ低血糖。糖尿病患者さん自身はどのように考えているのでしょうか。1型糖尿病患者さんである能勢さんは「我々糖尿病患者にとって、低血糖は珍しいことではなく『よくある日常』」と語ります。「低血糖は自然災害と同じようなものです。いつ来てもおかしくありませんが、いつ来るかわからない。なので『来ませんように』『ならないように』ではなく、『いつなってもいいよう』備えておくことが重要です」(能勢さん)

 そのために、糖尿病患者さんは自分の低血糖をよく知ることが重要と能勢さん。「低血糖は個人差が大きいので、時間帯や体調、加齢など自分が低血糖になりやすい状況を理解することが大切。また、震えや動悸、冷や汗、しびれなど、どんな症状が出たら低血糖なのかも把握することが重要です」と語ります。

 そのうえで能勢さんは、友人や職場の同僚など普段から患者さんの周りにいる人々へ、「必要な対策を気兼ねなく取らせてほしいと思います。それは、血糖測定やインスリンの追加注射、低血糖を回避するための補食といったものです。もし、『低血糖かな、低血糖になったかな』という人がいたら声をかけていただき、ブドウ糖やジュースを飲ませるといった対応をしてもらえると、患者としてはありがたいです」と語りました。

 現在、インスリン治療を行っている糖尿病患者さんは日本国内に100万人以上と言われています。あなたのそばにもサポートが必要な患者さんがいるかもしれません。最近では、継続的に血糖値を測れる測定器(持続血糖測定器)や、一日を通してインスリンを自然な形で投与できる「インスリンポンプ」という医療機器も普及しつつありますが、時には周囲の人々のサポートが必要な場合もあるでしょう。低血糖のような症状を目にした時には、能勢さんが紹介してくださった対応を率先してできる“仲間”でありたいものですね。(QLife編集部)

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