歯のエナメル質、人工的に作ることに成功

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2016年11月22日 12:01  QLife(キューライフ)

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エナメル質形成の「マスター遺伝子」を同定


画像はリリースより

 歯科検診でよく目にする、「C0」や「C1」などという記号。これらは虫歯の状態を表すもので、「C0」〜「C4」まで5段階に分けられています。「C0」は最も初期の段階で、歯の外側を覆っている「エナメル質」が虫歯菌(ミュータンス菌)の酸によって溶かされた状態。この段階では、削るなどの治療は必要なく、唾液の力で元の状態に戻る「再石灰化」や、適切な歯磨きで改善することができます。

 エナメル質は、虫歯から歯を守る“防壁”として重要な組織であり、体の中で最も硬い組織でもあります。しかし、エナメル質を作る細胞は、歯が完成してしまうと消失し、体の中に存在しない細胞となってしまいます。つまり、エナメル質は破壊されてしまうと再生させることはできず、金属やレジンなど人工物による修復しかできないのです。そのため、エナメル質を作る細胞の培養や、その分化制御法の開発が望まれていました。

 東北大学では、歯の発生メカニズムを解明する過程で歯原性上皮細胞に発現している転写因子「エピプロフィン」が、エナメル質形成や歯の形態形成にどのような役割があるのかを解明するため、米国国立衛生研究所と共同研究を実施。その結果、エピプロフィンがエナメル質を作るマスター遺伝子であることを同定し、機能解析することに成功しました。

新たな虫歯治療や歯の再生への応用に期待

 研究では、マウスの全身の上皮細胞にエピプロフィンが発現するよう遺伝子操作をした「K5ーEpfnマウス」を作製。生えてきた歯を解析した結果、通常のマウスではエナメル質が作られない場所に、エナメル質を作っていることが明らかになりました。また、通常のマウスと比べると、K5ーEpfnマウスの臼歯は、歯のかみ合わせのとがっている部分の形や歯根にも異常が認められました。臼歯の数も、通常のマウスは上下3本ずつ形成されますが、K5ーEpfnマウスでは上下それぞれ2本ずつしか形成されないといった違いもありました。

 今回の研究とこれまでの研究成果により、エピプロフィンは歯原性上皮細胞をエナメル芽細胞に分化誘導し、エナメル基質であるアメロブラスチンの発現を促進させ、エナメル質の形成を行っていることが解明されました。さらに、歯の発生過程の初期と後期で異なった機能を持つことも判明。初期は歯原性上皮細胞に発現し、歯胚の成長に重要な役割を演じ、後期は歯冠や歯根の形態形成を制御していることが明らかとなりました。

 東北大学では、「将来、歯の再生を考えた場合、本研究をさらに発展させることで、う蝕などで失ったエナメル質の再生や、歯冠や歯根の形までも制御できる技術開発に応用する研究を行って行きたい」と話しています。(菊地 香織)

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