360度動画も公開! MITが核融合炉でプラズマ圧力の新記録達成

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2016年11月29日 10:11  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

source:http://news.mit.edu/2016/alcator-c-mod-tokamak-nuclear-fusion-world-record-1014

核融合は未来のエネルギーとして期待される技術だ。その開発は容易ではないが、それでも研究は確実に前進しているようだ。マサチューセッツ工科大学(MIT)の実験用核融合炉アルカトールC-Modトカマク核融合炉が、プラズマ圧力の新記録を達成したという。

プラズマ圧力は重要な要素

『核反応』というと物騒なイメージを抱くかもしれないが、核融合は原子力発電などに使われる核分裂とは異なる反応だ。海中から採取できる重水素や三重水素を燃料とするため、枯渇の心配はほぼない。核分裂のように暴走することがないので、制御が容易である。地球温暖化の原因となる二酸化炭素を出さない。そして、高レベル放射性廃棄物を出さない。

核融合は太陽の中心で起こっている反応と同じで、核融合炉というのはいわば人工的に太陽を作り出す作業になる。それを地球上で実現するためには5000万度とも1億度ともいわれる高温が必要になる。そんな温度に耐えられる容器が存在しないなか、なんらかの方法でその温度のプラズマを閉じ込めないといけないわけだが、トカマク型の核融合炉では磁場を作ってプラズマを閉じ込める。

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source:http://news.mit.edu/2016/alcator-c-mod-tokamak-nuclear-fusion-world-record-1014

核融合のためには3つの要素が重要になる。プラズマ粒子の密度、それを閉じ込めておける時間、その温度だ。そして核融合反応が起きたときに放出されるエネルギーが、核融合反応を起こすために必要なエネルギーを上まわれば、反応が続くというわけだ。

今回新記録を達成したプラズマの“圧力”は、上記の3つの要素のうち『密度』と『温度』の産物だ。つまり重要な要素の3分の2を占めるのである。そして、核融合炉で作り出されるエネルギーは、圧力の二乗に比例して増えるという。つまり圧力が2倍になれば、エネルギーは4倍になるというわけだ。

内部温度は摂氏3500万度に

これまでのプラズマ圧力の最高記録は、同じくMITのアルカトールC-Mod核融合炉が2005年に記録した1.77気圧だ。今回は、約15%アップして、2.05気圧を記録した。そのときアルカトールC-Modの中の温度は摂氏3500万度に達した。これは太陽の中心の約2倍の温度だという。ちなみに持続時間は約2秒だ。

アルカトールと似たタイプのほかの核融合炉でも、実験において同様の温度を実現したことはある。しかし、プラズマ圧力はせいぜい1気圧ていどだったという。

「これは、MITのアルカトールCーModの研究プログラムの成功を示す見事な成果です。このプラズマ圧力の記録は、実用的な核融合炉の実現にむけて高磁場方式の有用性を証明しました」と、プリンストン・プラズマ物理学研究所のDale Meade氏は評価している。

アルカトールC-Modは、ドーナツ型の容器に、高磁場を形成して超高温のプラズマを閉じ込めるコンパクトなトカマク式核融合炉だ。C-Modの高磁場は、最大8テスラ(地球の磁場の16万倍)に達する。これは、ほかの典型的な核融合炉の2倍の強さで、4倍のプラズマ圧を作り出す能力があるという。

興味深いことに、このアルカトールC-Modの内部を、360度撮影した動画も、MITでは公開している。ブラウザや端末によってはサポートされていないことがあるので、対応するブラウザや機種でご覧いただきたい。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=nkMM61e8Ajw&w=560&h=315]

source:https://www.youtube.com/watch?v=nkMM61e8Ajw

現在フランスに建設中の核融合炉ITERは、このアルカトールC-Modの800倍の体積を持ち、2032年にフル稼働した際には、2.6気圧のプラズマ圧力を実現することが期待されているが、今回のアルカトールC-Modが達成した記録は、今後約15年間は続くと見込まれる。

このアルカトールC-Modの原理がどのように実際の発電に応用できるかを探るために、MITの核融合研究グループは、電力をあまり必要とせず、熱もあまり出さずに、より強い磁場を形成できる超電導体をあらたに採用しようと動いている。

その超伝導体が、Affordable Robust Compact炉(安価で頑丈でコンパクトな核融合炉。頭文字をとって『ARC炉』)と呼ばれる実験用核融合炉の中核をなし、最大で2億5000万ワットの電力を作り出す見込みとなっている。

10年、20年といった近未来にはまだ核融合炉が実用化されることはなさそうだ。しかし、研究は確実に進歩している。いずれ核融合がメインの電力源になっていく日が来るのかもしれない。

【参考】

※New record for fusion -MIT News

【動画】

※Alcator C-Mod 360 degree tour -YouTube

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