アメリカで話題の太陽光電力アダプター・プラグ「SunPort」 【前編】 開発者が語る「ソーラー革命」への夢

0

2016年12月02日 11:20  FUTURUS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

太陽光電力をみんなの手に届くものに

フォーブ誌によると、実に90%ものアメリカ人が太陽光エネルギーを望んでいるという。なのにアメリカの電力生産量で太陽光電力が占める割合は2014年度でたったの0.4%。そんな苛立たしい状況に風穴を開けるような製品がついに現れ、アメリカでいま、注目を集めている。それがこのコンセントプラグ、SunPort。

見た目は特に変哲もないプラグだが、これがただ者ではない。コンセントに差し込むだけで、太陽光発電によるクリーンな電力を直ちに使用可能にするプラグなのだ。とはいえ、電力会社から家に配電されている電気を物理的に太陽光電力に変えられるわけはない。どういう仕組みなのかというと、このSunPort、いわば一種のアダプターなのである。

たとえばラップトップパソコンを使用する際、SunPortを通してコンセントに差し込む。するとSunPortは使用電力量を計り、それをアメリカ環境保護庁が発行しているS-REC (Solar Renewable Energy Certificate / 太陽光エネルギー証明書)というクレジットの小口消費版クレジットを用いて太陽光電気の消費に換算する。それによって太陽光電気の消費を高め、需要を喚起、太陽光エネルギーを推進するという仕組みだ。

いままで太陽光電力を使いたくても、インフラやコストの問題で使えない人がほとんどだった。それがこのSunPortの登場で、誰でも実に手軽に、自宅の既存の配電網を通して太陽光電力を使えるようになったのだ。

開発したのはCloudSolar社創業者兼CEOのポール・ドロージュ氏。長年電力業界でキャリアを積んだベテランだ。ドロージュ氏は語る。

「再生エネルギーを使うのに、もう政治家や電力会社がなにかしてくれるのを待つ必要はありません。SunPortを使えば簡単に太陽光電力を使用でき、太陽光発電を推進できるのです。一人ひとりの選択と行動でも、多数になればこの世界を変えることもできるのです」

「SunPort」およびドロージュ氏が進めようとしている「ソーラー革命」について伺ったお話を、全三回にわけてお届けする。第1回は製品開発の経緯について――

太陽光業界の人間でさえ誰もソーラーパネルを持っていなかった!

――SunPort開発のきっかけは?

ある日、太陽光発電業界のカンファレンスに行ったとき、司会者が「みなさんの中でソーラーパネルを持っている人は?」と聞いたんです。でも手を挙げたのはほんのわずかでした。それでひらめいたんです。もっと簡単に、もっと手頃な価格で手に入るのでなければ、太陽光電力が普及するわけがないと。その後、そのことがずっと頭から離れず、どうしたら太陽光電力を手軽に、手頃な価格で使えるようになるかアイデアを集めました。

――創案から製品化まで、ずいぶん試行錯誤をなさったとか。

仕組みがコンセプチュアルでややこしいので、当初、理解してもらうのに苦労しました。しかし、アメリカでも再生エネルギーが関心を集めるなか、ひとたびローンチすると、クールなアイデアというので内外のメディアに取り上げてもらえました。

――日本でも今年4月にようやく電力が自由化されました。この機会にクリーンエネルギーによる電力を選びたいと考えた消費者も少なくないのですが、いまだ電力構成開示さえ進んでおらず、難しいのが現状です。SunPortはまさにそんな消費者の受け皿となるような商品ですね。

太陽光、あるいは他の種類の再生エネルギーを使いたいのに使えない……そんな人たちのためにSunPortを作りました。自宅の屋根にソーラーパネルをつけられればいいけれど、それには初期投資が必要で、みんながみんなできるわけではありません。また、家が日陰にあったり、屋根の向きが悪い、あるいは集合住宅で自分自身の屋根がないといった理由でソーラーパネルがつけられない人もたくさんいます。引っ越しが多い人もいますしね。日本のように、電力会社から太陽光電力のみ買いたいと思っても可能ではなかったり……。SunPortはこのような消費者が費用や手間をかけず、手軽に簡単に太陽光電力を使えるようにと生まれた製品です。ソーラーパネルを設置する必要もなければ、屋根を持つ必要もない。高い電気代を払う必要もない。SunPortさえあればいとも簡単に太陽光を選べるわけです。

世界初のプラグイン・スマートグリッド太陽光電力デリバリーシステム

――使用する電気を太陽光電気に換算する「太陽光エネルギー・クレジット」のシステムについて教えていただけますか。

通常、自宅に来る配電網の電気は、石炭も天然ガスも太陽光などの再生エネルギーによるものもすべて混ざってしまっています。アメリカでは太陽光発電市場を成長させるため、環境保護庁がS-REC(太陽光再生エネルギー証明書/Solar Renewable Energy Certificate)というクレジットを発行しました。これは消費電力を太陽光電力消費に変えるクレジットで、このシステムを使えば自分が契約している電力会社の普通の配電網を使いながら太陽光電気を使うことができるのです。

とはいえS-RECは大容量消費のためのものなので、その小口消費版、「SunJoule®」というミクロクレジットが作られました。「SunJoule®」は太陽光電力を確かに使っていますよ、というクレジットとして機能します。つまり、ユーザーが「SunPort」を通して使った分の電力が、太陽光電力を使ったと見なされるのです。プラグインするだけという、世界初のスマートグリッド太陽光電力デリバリーシステムです。

――SunPortを使うことにより、電気代が変わりますか?

残念ながら電気代は変わりません。電気代を節約できるわけではなく、電気代はいままで通り支払わなければなりません。SunPortが行うのは使用電力が太陽光発電によるものだという証明を届けることだけです。それでも、SunPortは再生エネルギーを使う最も安上がりなやり方です。SunPortを使うにあたって初年のコストはデバイス代の50ドルほどだけ。翌年からは太陽光電力への変換代が1年に20ドルほどかかるだけですから……SunPortをラップトップコンピュータに使うだけでも、平均的な消費者の10倍から20倍もの太陽光需要を生み出すことができるのです。また、SunPortはReChoice というNPOと連携しており、SunPortの太陽光電力の消費量に応じて、新しいソーラーパネルが作られる仕組みになっています。だからSunPortを使うことでソーラーパネルの増築にも貢献できるのです。それは地球を救う大きな一助だと思います。(了)

【参考】

※ SmartPlug Solar Device For Using Solar Power Anywhere  – SunPort

※ Green Power Partnership – US EPA

※ ReChoice

動画・画像が表示されない場合はこちら

このニュースに関するつぶやき

  • アメリカで話題の太陽光電力アダプター・プラグ「SunPort」 【前編】 開発者が語る「ソーラー革命」への夢
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ニュース設定