男性の“主体的な”育児参加にまつわる雑感

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2016年12月06日 12:02  MAMApicks

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仲の良い男友だちのところに待望の赤ちゃんが誕生した。
付き合いが長い友人で、私にとっては弟のような存在なので、まるで親戚の赤ちゃんが誕生したような気分だ。

不要になった子育てグッズやサイズアウトした娘の服を譲ろうと、少し前に我が家まで来てもらったとき、「もう奥さんが里帰りしてしまうので、自分ひとりで保育園の見学に行くことになって、どういうところに着目したらよいのか教えてほしい」と尋ねられた。

早く子どもが欲しいという話もよく聞いていたし、そのぶん、保活や待機児童の問題にも関心があるようで、未知の世界だけに不安だとも漏らしていた。子どもが生まれる前からの保活についての是非はあるが、もはや都会で保育園に入れるためには当たり前となった感もある。

それでも、男親がこんなに主体的に動いている事例を、少なくとも自分の周囲で見たのは初めてで、「今も週一回くらいはリモートワークを試みている」「会社が推奨してくれているので自分も育休を取る」そして、「制度を利用するからには仕事のパフォーマンスも上げたい」と聞いたときは、彼の真面目な性格は前々から知っていたものの、「しっかりしてるなあ」と呆気に取られてしまった。

そんな彼を非常に頼もしいと思う一方で、そもそも育児に“主体的”だとか“前向き”って何なんだろうという気持ちにもなった。

たとえば母親に、「あなたは育児に主体的になれる?前向きになれる?」なんて質問する場面があるだろうか。

もしその答えがノーだったときに、「じゃあ子育てしなくていいよ」なんて言ってもらえるだろうか。

お腹が空いても、おむつが濡れていても、うまく寝られなくても、泣いている赤ちゃんを前に、「産んだけどあんまり主体的に考えられないからやめときます」なんて言ってられない。

授乳して、ミルクをあげて、おむつを替えて、抱っこして寝かしつけて……と、目の前にあるタスクを一つひとつ、つぶしていくしかない。

次のステップに移って、子育てしながら仕事をしようと思ったら、保育園を探さなくてはいけない。保育園に預けられたら「はい、終わり」じゃない。たとえ仕事が終わらなくても、どこかでけりをつけてお迎えに行かなくてはいけないし、帰宅したらご飯も食べさせなくてはいけない。

外にリソースを求めて自分の負担を減らすことはもちろん可能だけど、そのリソースを探すのはやはり自分の仕事だ。誰かが勝手に代わりにやってくれるわけじゃないのだから、主体的になるのも当然だ。


別の男性と話をしたときのことだ。
3児の父である彼は、シフト勤務で働いていて休みは週1がベース。「休みの日は朝から晩まで子育てをしているから、正直僕の休みは全然ない。寝不足なのに子どもに騒がれたらイラっとしちゃうし、それで怒っちゃうこともあって反省してばっかり」と語っていた。

その彼に、「仕事が忙しいことを理由に『俺は子育てに参加できない』って放棄してしまう人もいる中で、あなたが子どもたちに向き合おうとするモチベーションは何なの?」と聞いてみると、「子どもたちが大きくなって、幼少期を思い出したときの記憶に僕がいないっていうのが嫌なんですよね」と答えてくれた。

その答えの主語が「僕」であることにものすごく前向きなものを感じた。
「それでも、嫁にはもっと手伝ってくれって言われるんですよー」と苦笑いしていたけど、この人は自分のできる限りのことをしているんだろうな、と確信できた。


夫婦が絶えず同じ熱量で子育てできるかというと、なかなか難しいものがある。
筆者の夫もわりと激務の部類なのだが、それでも土日は休めているし、激務比べをしたらもっと上を行く男性はゴロゴロいるだろう。

長時間労働が常で、断れない付き合いや飲み会が続いて、おまけに休日も出勤で……、なんて状況で、物理的に子どもと接触できないのであれば、子どものことを考える時間さえないかもしれない。

となると、父親には「できる範囲での子育てを」というのがセオリーなのだろうけど、そこに「仕事が忙しいんだから子育てに関しては大目に見てほしい」みたいな気持ちがあるかどうかは結構透けて見えるような気がしている。

そこが、「せめて休みのときは積極的に子育てしよう」となるか、「忙しいんだから仕方ないだろう」と分岐するのは何なんだろうな、と数名の男性と話してみて考えている。

やっぱり子どもがかわいいからなのか、奥さんのことが大事だからなのか、意外と体裁や世間体を気にしてって人もいるかもしれない。

だけど、忙しいなりに子育てするためには、自分で何かしらエネルギーを捻出しなくてはいけないし、自然に任せていると後者に流れていってしまうものだとも思う。子育てに力を注ぎたいから男性が働き方を変える、というのは覚悟がいることだろうし。

ただ、流された結果、どんどん夫婦間に温度差が生じた先に待ち受けているものが「産後クライシス」だとしたら、やっぱり放置しておくのがまずいということも分かっている。

お互い疲れていると、「言わなくても分かってほしい、察してほしい」ムードが漂ってしまうものだけど、相手にしてほしいことはちゃんと伝える、ってことも含めて、子育てに対する“主体的”な向き合い方なのかもしれない。


パパになったばかりの友人には、新生児の写真を見せてくれと催促しつつ、「これから頑張ってね」とエールを送った。

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。

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