あの「折り鶴」に秘められた、最新技術の真相【前編】

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2016年12月29日 10:11  FUTURUS

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FUTURUS

FUTURUS(フトゥールス)

「今年(こそ?)は、IoT元年」といわれた、2016年。

その象徴の一つとして、CEATEC JAPANがメインテーマに「IoT」を掲げて、各社が本腰を入れた製品・サービスを数多く紹介していたことは記憶に新しい。

なかでも、会場を訪れたひとやテレビなどの報道を見たひとたちの印象に残っているモノの一つが、CEATEC会場を天高く舞った『ORIZURU』ではないだろうか。

[youtube https://www.youtube.com/watch?v=gF9PZjDvwu8]Source:https://www.youtube.com/watch?v=gF9PZjDvwu8

バサバサと羽ばたくORIZURUは、どうして安定飛行ができるのか? そもそも、半導体・電子部品メーカーのローム・グループが、なぜ空飛ぶ折り鶴をつくったのか?というか、折り鶴のどこが“IoT”なの……?

そんな素朴な疑問や今後の進化などについて、ORIZURU開発者である、ローム・グループのラピスセミコンダクタ株式会社の斎藤直孝氏にぶつけてみた(全2回)。

日本のモノづくりの未来を、どう切り拓いていくか

――2015年に続いて2年連続で、CEATEC JAPANでORIZURUを披露されましたが、そもそもORIZURUの開発を始めたきっかけは何だったのですか?

半導体メーカーとして、「どうやって未来を切り拓いていくか」と考えたことが、このプロジェクトの出発点です。

“未来”とは、私たちラピスセミコンダクタやローム・グループにとっての未来であり、日本の“モノづくり”全体の未来でもありました。

――御社の技術を使って、日本のモノづくりの未来に貢献しようと考えたということですね。

そうです。私たちは、ありとあらゆる制御ができる技術や、超低消費電力技術、近距離通信無線技術といった先端技術を持っています。

それらの技術をあわせ持つマイコンや無線通信ICを手軽に使っていただくことで、さまざまなモノづくり企業のIoT(モノのインターネット)のお役に立てないか――。そう考えて2013年頃からつくり始めたのが、ORIZURUに搭載されている『Lazurite Fly』のベースになる『Lazurite』という超小型マイコンボードです。

日本には、世界に通用する技術力を持っている中小企業さんなどが数多く存在します。そのような方々が世界で戦っていくためのサポートをしたいという想いが、この小さなボードには込められています。

ハラハラ、ワクワクしながら、楽しめるモノを

――その想いが、ORIZURUという飛行体になった理由は何ですか?

まずは、『Lazurite』自体の技術に興味を持ってもらう必要があると考えました。こういう技術があるということを知ってさえもらえれば、「この良さは、伝わる方には伝わる」という自信を持っていましたので。

そして、「自分たちがいま持っている技術でできるものは何だろう」と考えた結果が、小型軽量の飛行体でした。CEATEC JAPANの広い会場で目立って、人目を引くという目的もありました。

――どうして、ドローンのようなものではなく、折り鶴型にしたのですか?

飛んでいる様子を見て、「楽しい」「愛らしい」という気持ちになっていただけるものにしたかったんです。

そこで、『超小型飛行体研究所』を主宰している宗像俊龍氏に機体の製作を依頼して、美しさや楽しさを感じられる折り鶴に決めました。

――2015年から進化した部分の一つとして、バックフリップ(後方宙返り)をしていましたね。

裏話をお話ししますと、最初は空中でホバリングをさせようと考えていました。でも、クルッと回転したほうが、見ている皆さんにハラハラしたり、楽しんだりしていただけるかなと思って、バックフリップさせることにしました。

ただ、バックフリップさせることに決めたのがCEATECのわずか2カ月前で、そこから短期間でつくり込むのはかなり大変でした(笑)。

ORIZURU の心臓部に組み込まれた、3つの最新技術

――ORIZURUに搭載されている最新技術についてお教えください。

ORIZURUの心臓部になるマイコンボード『Lazurite』には、さまざまなIoTを実現する3つの大きな特長があります。

1つ目は、非常に低消費電力で、「電池で10年間作動できる」というコンセプトで開発されている点です。

2つ目の特長は、「電波がよく飛ぶ」ということ。Sub-GHz(サブギガヘルツ)という電波帯で、軽く100メートルは飛びますし、理論上は1キロ近くまで飛びます。

そして3つ目が、「一つのシステムとして完成している」ということです。

――システムとして出来上がっているということは、『Lazurite』とパソコンを無線でつなげるだけでも、いろいろなIoTを実現できるのですか?

その通りです。たとえば、『Lazurite』で外部センサのデータを取って、その大量なデータを無線で手元の『Lazurite』を接続したパソコンに送ることもできます。また、設定次第で、クラウドやインターネット上に直接データを保存することも可能です。

さらに、『Lazurite』同士で、データを無線でやり取りすることもできます。ORIZURUと、それを操作するウェアラブルコントローラー(センサノード)の組み合わせは、この使用法の一例です。

――ほかにも特長はありますか?

それに加えて、「ソフトウェアのソースを公開していて、簡単にプログラミングできること」や、超軽量なことも、他に類を見ない独自性です。現時点で、これらのコンセプトのあわせ持つ製品はほかにないと思っています

なぜ、ORIZURUは悠然と飛び続けられるのか?

――そういった技術の集大成が、一つのアウトプットとして具現化されたものが、ORIZURUというわけですね。

そうです。さらに、ORIZURU用にカスタマイズした『Lazurite Fly』では、無線通信ICとセンサ、モータードライバをSDカードサイズに凝縮しています。

――『Lazurite Fly』にセンサ技術があるから、ORIZURUの姿勢を制御できるのですね。

ゆっくりと羽ばたくORIZURUは、機体が上下に大きく振動するので、安定飛行が非常にむずかしい飛行体です。

そこで、2016年のORIZURUでは、新開発の加速度センサとジャイロセンサを用いて、機体の飛行角度や方向、機体の傾きなどを検知して、機体自身がバランスをとりながら飛ぶという最新のセンサ技術が活かされています。

――『Lazurite Fly』上で、リアルタイムにデータ収集と制御が行われているということですか?

そうです。さらに、『Lazurite』を搭載したウェアラブルコントローラーも使って、手の動きによるジャスチャーコントロールでの遠隔操作を実現したことも、画期的だと思っています。

【取材協力】

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