エコライフを体現した先駆者的存在・エコロニア

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2016年12月29日 11:21  FUTURUS

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FUTURUS(フトゥールス)

エコ住宅のパイオニア

オランダの首都、アムステルダム市から車で約1時間ほどにあるアルペン・アン・デ・ラインには、その名もずばり、「エコロニア」という名前の約2ヘクタールにわたる公共住宅地がある。住宅の素材から雨水を工夫してリサイクルするなど、省資源を念頭においた生活を送るために建築されたということで、オープン時には国内外で大きな話題となった。

竣工は1993年だが、当時のオランダでは「エコ」なライフスタイルにちょうどスポットがあたり始めていた時期である。そのため、多少鳴り物入りで建築はすすめられ、オープニング時の祭典には、時の女王・ビアトリクスが出席してテープカットを行ったことが、ニュースで大々的に報じられた。

このエコロニアは、オランダの環境庁及び公共住宅地振興組織、そしてアルペン・アン・デ・ライン市が協賛して開発され、事業化された住宅街である。閑静な住宅地をデザインするためには、それなりの知識と経験を持った建築家がふさわしいということで、市議会議員や建築業者たちによって、ベルギー出身の建築家・ルシアン・クロール氏が起用されたいきさつを持つ。

エコな工夫が随所に

全地域の住宅戸数は全部で101戸。もともと、省資源を念頭に置いた生活を入居者に送ってもらう目的で事業化されているが、リサイクル・エネルギーの重要性を肌で感じ取ってもらうため、家の中の随所に工夫がなされているのが特徴だ。たとえば雨水も、屋根を伝わってそのまま樋に流してしまうのではなく、雨水の受け皿を特殊なパイプとつなぎ、最終的にボイラーに貯まるようにしておけば、あとで保温してセントラル・ヒーティングの暖房のために使えるようになっている。

雨水を再利用した「ため池」もある。これは直径20メートル、深さは35センチほどの人工池で、各住宅の屋根を伝わり樋に流れる雨水をためる貯水用として使われている。池の中には水草が植えられ、とんぼやカエルなどが放たれ、雨水を分解する水中微生物が住みやすい環境が保たれているという。理想的な生態系が構成されれば池の水は浄化され、居住者の生活にとって最適な湿度を保つために重要な役割を果たしているともいえそうだ。

各住宅の建設に使用されている建材もユニークだ。エコロニアというくらいだから、リサイクル木材が使われているのかと思いきや、これらはすべて新しい木材が使われているのだ。しかし実は、これらの木材は200年後でもリサイクル可能な、厳選されたものだけが使われている。

強いて言えば難点も

エコロニアでは、入居者が本当にエコな生活がきちんと送れているのかどうかを知るために、地元のガス・電気会社が中心となり、エネルギー消費量の調査がこれまでに数回行なわれているという。その結果、ふつうの住宅とエコロニアと比較すれば、後者は約50%から60%のエネルギーが、自らまかなえることが判明しているそうだ。

しかし、気になるのは住宅の値段だ。それなりに高額なのではないか?と思いきや、実はエコロニアの住宅はごく平均的な住宅(メゾネット)の平均価格とほぼ同様で日本円にして4500万円ほどだという。住人にいわせると、エコロニアの家に住み、省資源に徹底すればそれなりに暖房費や水道代が浮くため、とても経済的ということだ。

住民の話によると、ひとつだけ難点をあげるとすれば、エコロニアの住宅地内は、自動車の運転速度を10キロほどまで落とさねばならないことだそうだ。もちろんこれは、住民の安全を守るためだが、早朝など出勤で急いでいるとき、普通道路の制限速度以下で慎重に運転をせねばならないため、それを苦痛に感じている人もいるという。

2年前から開始された改装工事がようやく終了し、エコロニアの住宅街はさらに進化しつつある。日本でも、実現が可能と思われる好例が多くあることに期待したい。

【参考】

※ Ecolonia.I.Alphen GerwenArchitecten Amersfoort

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