彼女たちはなぜラーメン画像を投稿するのか? 「ラーメンのコミュニケーション化」最前線

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2017年01月12日 09:48  mixiニュース

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画像提供:森本聡子さん
森本聡子さん(一番左)が主催する「ラーメン女子会」。
女性とラーメンの接点を増やす趣旨で都内を中心に40回以上開催されているという。(名古屋市『麺屋玉ぐすく』にて)

本特集の記事「ラーメンと女性の埋まらぬ距離」では、ラーメンとの付き合い方が男女で異なる要因を考察しました。両者の食習慣の違いが利用頻度の差に繋がり、「ラーメン店=男性的」といった印象を残してきたわけです。

しかし近年、そうしたジェンダーイメージは徐々に薄れつつあるようです。そのきっかけの一つが、ラーメン店で行われる「女子会」。男性とは異なるラーメン文化が今、若い女性の間に広がり始めています。その実態に迫りました。

SNSにラーメン画像をアップする女性たち

「国民食」としてあらゆる世代に親しまれているラーメン。女性が一人で麺をすする風景は決して珍しくなくなりましたが、食系のメディアには「俺たちのフード」「オトコの聖域」というイメージが今も残ってはいないでしょうか。ガッツリ系ラーメンに代表される、ハイカロリー、脂ギッシュなイメージがそれを後押ししている気も。

「ちょっと待って! 『#ラーメン女子』の盛り上がりをご存じないですか? 女の子のラーメンムーブメントも無視できませんよ♪」と語ってくれたのは、「ラーメン女子博」のプロデュースで活躍している森本聡子さん。

森本さんによると、Facebook、Twitter、InstagramといったSNSが浸透して以降、若い女性の間で投稿目的の食べ歩きが急増するなど、ラーメンのコミュニケーションツール化が進んでいるとか。

そんな女性たちは「ラーメン女子」と呼ばれるようになり、SNSにおける「#ラーメン女子」は女子会ノリでラーメンを食べに行く行為として用いられることもあるようです。

しかし、ここで一つ疑問が。「太りやすい」「マッチョなイメージで女性らしくない」などと見られかねないラーメンを、わざわざSNSにアップするのはナゼ?

「多くの女性にとっては『非日常』なアイテムだから、食べたらアピールしたくなるんです。 そのインパクトはパンケーキなどのトレンドフードに匹敵しますし、あとはそうだな……ブランドバッグを買ったときの興奮とかにも似ているんじゃないかな」(森本さん、以下「同」)

ラーメンが非日常! 男性にとっては驚きのコメントが飛び出しました。そんな男女の“麺観”の違いは多方面に渡ります。

「男性は一度ここと決めたら浮気しないというか、決まった店をループしがち。『ここ美味しいよ!』と薦めても意外に行ってくれないものです。その点、女性は『ミシュランにも載った』『美味しくて楽しくて、なごめるお店』『スイーツも美味しい!』なんてプッシュすると、すぐに実食してきてくれる子が少なくないんですよ」(同)

自分好みの一杯が見つかったら、とことん通いつめるのが男性なら、コミュニケーションのフックを求め、様々な店に足を運ぼうとするのが女性というわけです。

そんな男女のスタンスの違いは入店後にも顔を覗かせます。

「今どきのラーメンの相場は700円〜1000円ぐらいでしょうか。男性の場合、日常的に食べている人も多そうだし、相場の範囲で済ませるのが普通かもしれません。ただ、ラーメン女子はもっと奮発しますよ! 具材をいろいろトッピングしますからね」(同)

滅多に来ないだけに豪快なラーメンに挑戦するつもりなのかと思いきや、狙いは別のところに。

「自撮りと同じで、ラーメン画像も“盛って”アップしたいんですよ。味付け玉子をトッピングしたら、オレンジの色味で見た目が華やかになるでしょ? 写真映えするように盛り付けを工夫するわけです。あと、店内や自分自身を写し込んだ一枚をおさえることもよくあります。みんな気分は“ラーメンと私”ですから 」(同)

ラーメン画像の撮影でも、彼女たちが目指しているのはキラキラした“非日常感”の演出。迫力やインパクトでラーメンの魅力を伝えようとしがちな男性とは、また違ったアプローチになるようです。


ラーメン店での「女子会」 店主はどう思っている?

画像提供:森本聡子さん
華やかな盛り付けが魅力のラーメン店「ソラノイロ NIPPON」(東京駅)の一杯。
2011年にオープンしたソラノイロは4店舗を構え、女性から圧倒的な支持を得ている

「ラーメン女子」は、男性中心の従来型ラーメン文化とはまったく異なる新勢力だということがわかりました。これをラーメン店サイドがどう考えているのか気になりますが……実は、多くの店がウェルカム! 女性客を増やしたい店主にとって、女子会は魅力的なコンテンツに映るそうです。

「今はSNSへの露出が集客に直結する時代。みんなが話題にして、バズっているものに強い関心を示すのは男女共通ですが、そこからの拡散力でいったら、断然女性でしょう。女性層へのアプローチに悩む店主の中には、 女子会ノリでいいから自分の店をどんどん取り上げてほしいと思っている人が少なくないんですよ」(同)

そんなニーズに応えているのが、森本さんが主催する「ラーメン女子会」。定休日のラーメン店を借りて行われるこの会には、モデル仲間など同性への影響力が強い女性が 多く参加するのだとか。

その狙いは、会の様子をどんどんSNSに投稿してもらうため。高い拡散力を通じて女性の集客が期待できるそうです。

「ラーメン店に関心はあるけど、行き慣れない場所だけに不安もある。そんな女性たちにとって、同性からのラーメン投稿は心理的ハードルを大きく下げてくれます。さらに、何度もラーメン投稿を見ているうちに、“自分も流行りに乗っかりたい”という気持ちが芽生えやすいのも女性ならでは。複数のインフルエンサーがラーメンネタを投稿することで、一人、また一人と女性たちが未知の世界へ向かうモチベーションを高めていくわけです」

かくして、SNS上で広がる女性のラーメンムーブメント。今後もじわじわ拡大していくのか、あくまで一時の熱で次第に冷めていくのか? 森本さんは決して一過性のものではないと考えているようです。

「頑固オヤジがやっている、ちょっと怖そうな空間……そんな従来のラーメン店の固定観念を覆し、女性も楽しめる創作ラーメンが東京を中心に登場し始めたのが2011年頃のことです。SNSも同じ頃に普及し始め、女性がラーメンを介してコミュニケーションを楽しむ環境が整いました。店主さんたちの意識はどんどん女性に向いてきているし、SNSもすっかりインフラに。この追い風を受けて、ラーメンを楽しむ女性は今後も増え続けていくでしょうね」(同)

一時のブームとして消費されることなく、店主、業界を巻き込んで盛り上がりを見せる「ラーメン女子」。「カッコいい」「渋い」だけじゃなく、女性が親しめるラーメン店が増えるのは男性も大歓迎ですよね! ラーメン愛好家にとって楽しい時代が到来しているのは間違いなさそうです。

●識者プロフィール
森本聡子さん(もりもと・さとこ)
タレント、「ラーメン女子博」プロデューサー。年間600杯以上のラーメンを嗜み、豊富なラーメン知識をもとにテレビや雑誌、WEBメディア等で活動。また、女性向けのラーメン店が集結する「ラーメン女子博」(3月16日(木)〜20日(月・祝)横浜赤レンガ倉庫)を開催。女性が一人でラーメンを食べるカルチャーの普及に尽力する。

●文・構成/佐々木正孝


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このニュースに関するつぶやき

  • だから、誰がラーメン=男性って言ってるの?ふつーに女性客いるじゃん。ただ、ランチしながらお友達としゃべりたい時は行かないだけでしょ?
    • イイネ!54
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