トランプ政権発足で、あのスノーデンがアメリカに引き渡される?

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2017年01月13日 18:02  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<アメリカの機密情報を内部告発して現在ロシアに亡命中のスノーデンだが、親ロシアのトランプ政権になれば立場が危うくなるという見方が出ている>(写真:昨年11月、ブエノスアイレスで開催されたイベントにビデオ通信で参加するスノーデン)


 1月20日、アメリカではドナルド・トランプ新大統領が誕生する。


 トランプの政権移行チームは次々と閣僚を指名して新政権発足に向けた準備をすすめている。アメリカでは、要職に指名された人たちは議会の承認を得るために公聴会をクリアする必要がある。


 今週12日、注目の公聴会が開かれた。次期CIA(米中央情報局)長官に指名された、マイク・ポンペオ下院議員の公聴会だ。ロシアのハッキング問題やIS(いわゆる「イスラム国」)の問題など様々な問題が取り上げられたが、なかでも注目されたのは、元CIA職員で元NSA(米国家安全保障局)の契約職員でもあったエドワード・スノーデンへの言及だ。


 言うまでもないが、スノーデンといえば、米政府による大規模監視プログラムやサイバー作戦などの機密情報を内部告発した人物で、現在は米政府に訴追されたまま亡命先のロシアで暮らしている。


 ポンペオは、「ロシアの隠れ家でくつろぎながら、諜報活動について米国民を欺くエドワード・スノーデン」は情報暴露の責任から逃れられないと述べた。


【参考記事】スノーデンが、敵対政府から記者を守るデバイスを開発


 実は、昨年11月に共和党のトランプが大統領戦で勝利してから、欧米メディアでは、スノーデンの処遇についてあらためてスポットライトが当たっている。というのも、トランプ陣営からはポンペオのようにスノーデンの厳罰を求める発言が出ており、現在ロシア政府の庇護のもとにあるスノーデンは、親ロシアのトランプ政権が誕生することで立場が危うくなるのではないかとの見方があるからだ。


 トランプ次期大統領は、2013年にスノーデンついてコメントしている。米FOXニュースの番組で、「彼はとんでもない裏切り者だと思うね。強国なら、古き良き時代にどうしていたと思う? 裏切り者がどんな目にあったのか、知っているだろ?」と語っている。


 12日に指名承認のための議会公聴会に臨んだポンペオ次期CIA長官は、もともとスノーデンを目の敵にしている人物として知られている。ポンペオはかつて、スノーデンが機密情報を外国政府に渡していることも示唆していた。また昨年2月、ポンペオは米テレビ局「C-Span」のインタビュー番組に登場して、こんなコメントをしている。「彼(スノーデン)はロシアから連れ戻されて適正な法の手続きを受ける必要がある。私が思うに、彼は死刑の判決を受けるのがふさわしいだろう」


 つまり、ロシアと良好な関係を維持するとみられるトランプ政権になれば、もしかするとスノーデンがアメリカに送還されて裁判を受け、極刑を言い渡される可能性がある。トランプ政権で国家安全保障担当大統領補佐官になるマイケル・フリン元国防情報局長官も、スノーデンの暴露が米兵の命を危機にさらしたと主張している。


 こうした劣勢に、スノーデン自身はなんと語っているのか。世界中のメディアや企業からの依頼を受けて、ロシアからあちこちのビデオに頻繁に登場しているスノーデンは、何度かこの件について発言している。


 昨年12月のインタビューでは、「多くの人が私にこう聞く。トランプが『プレゼントとしてこの男を渡してくれないかい』と言って(トランプとプーチンの間に)何らかの取引が行われるのではないかと。私には、そんなことが起きるのかどうかはわからない。起きる可能性はあるのか? それはあるだろう。私はそれに戦々恐々としているのか? いいえ。なぜなら、こういうことだ。私は自分がした決断に満足している。正しいことをしたとわかっているのだ」と、語っている。


【参考記事】NSAの通信傍受を恐れて進む米ネット企業離れ


 スノーデンはとにかく、「先のことは予測できない」が「心配していない」と繰り返している。一方で、マイケル・ヘイデン元CIA長官にように、トランプはスノーデンのような頭痛の種はいらないだろうと見ている人もいる。


 球技に例えるならボールはトランプの側にある。果たして、トランプ新政権はどう動くのか。


≪執筆者≫


山田敏弘


国際ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版などで勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で国際情勢の研究・取材活動に従事。訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)。現在、「クーリエ・ジャポン」や「ITメディア・ビジネスオンライン」などで国際情勢の連載をもち、月刊誌や週刊誌などでも取材・執筆活動を行っている



山田敏弘(ジャーナリスト)


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  • 国家機密をバラした上に亡命した人って反逆者もしくはスパイですけど?自分がやったことの責任はとるべきでしょ?日本人ってお花畑が多いわね。
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