発症の鍵となるタンパク質を同定
中性脂肪が肝臓に貯まる「脂肪肝」。軽度の場合、生活習慣の改善などにより良くなることもありますが、肝硬変や肝臓がんなどの“重病”に進行する可能性もあり、軽視してはいけない症状です。
脂肪肝の中でも近年増加しているのが、「非アルコール性脂肪性肝疾患」です。飲酒ではなく、肥満や糖尿病などの生活習慣病が発症の原因となるもので、食生活の欧米化に伴って増加しており、日本でも成人の1〜3割が罹患していると推定されています。
このような“食べ過ぎ”による脂肪肝発症の鍵となるタンパク質「beta-TRCP1」を同定したと、東北大学大学院歯学研究科先端再生医学研究センターの犬塚博之准教授らによる共同研究グループが発表しました。beta-TRCP1は、細胞内で不要となったタンパク質を分解・除去する役割があり、解析を進める過程で、脂肪肝発症に関わる新たな分子機構を発見しました。
マウス実験で脂肪合成量が減少
研究グループは、beta-TRCP1の基質を探索した結果、「Lipin1」と呼ばれる新たな基質のタンパク質を同定。Lipin1は、肝臓で脂肪の消費を促進し、合成を抑制する働きがある「肝脂肪合成抑制タンパク質」であることがわかっており、beta-TRCP1がLipin1タンパク質を分解することで、肝臓で脂肪が合成されると予想しました。
beta-TRCP1を培養肝臓細胞で欠損させたところ、Lipin1タンパク質が分解されずに細胞内に蓄積し、細胞内での脂肪合成量が減少することを確認。さらに、beta-TRCP1を全身で欠損させた「beta-TRCP1ノックアウトマウス」と野生型マウスにそれぞれ高脂肪食を長期間食べさせて、肝臓の脂肪蓄積量を観察してみると、野生型マウスには脂肪肝が見られた一方、beta-TRCP1ノックアウトマウスは過剰な脂肪の蓄積が抑制されていることがわかりました。
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これらの研究成果により、脂肪合成タンパク質であるbeta-TRCP1の働きを抑制することで、脂肪肝の発症を防ぐことができる可能性があることが明らかになりました。今後、非アルコール性脂肪性肝疾患をはじめとする脂肪性肝疾患に対する有効な予防法・治療法の開発につながることが期待されます。(菊地 香織)
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