プラズマが傷を治す
高電圧によって分解された低温プラズマには、傷を癒すパワーがあるそうだ。現在、オランダのアムステルダム大学医療センターでは、プラズマを利用して開発した、ハイテク絆創膏を使って、ケガの治癒程度をしらべる実験治療が行われている。
ところで、プラズマとは何か。簡単にいえば、原子に高エネルギーを徐々に」に与えていったとき、最終的に生じる気体のことだ。物質の原子に何らかのエネルギーが加わると固体は液体に変化し、さらに気体を生じるようになり、そこからプラズマが得られる。この変化過程では温度の上昇をともなうことからプラズマ自体の動きも活発になり、非常に強いエネルギーが生み出される。このエネルギーをもってして治癒に役立てられれば、というのが、この絆創膏開発の主旨なのだ。
絆創膏のちょっと複雑な内部構造とは
「見た目は絆創膏ですが、構造はちょっと複雑です」と、発案者のオランダ人、バスティアン・ゼーパーは言う。彼はオランダ東南部の都市、アイントホーヴェンにあるハイテク医療器具開発企業の代表的人物で、「絆創膏のように肌に貼りつけて使うのですが、構造としては、空気を含んだポリマーの中にガーゼを入れたものです」と説明する。
このガーゼに高電圧を加えると、ポリマー内の空気がイオン化し放電され、低温プラズマを生ずる。このプラズマにはバクテリアを殺菌する能力があり、傷口周辺の細胞の再生循環を促しながら治癒するというわけだ。この絆創膏は、現在の実験では2~3センチ幅の傷に適しているというが、さらに手術などで必要とされる大きなサイズも開発予定だそうだ。ちなみにこの絆創膏は、長時間貼っておく必要がない。一日に約1分間ほど貼ればそれでよく、傷の治癒まで毎日繰り返す実験が行われている。
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今後の課題がクリアされれば・・・
しかし、プラズマを生じさせて傷口に貼っておけばそれでオーケー、とそう簡単にはいかないという。傷口に対して安全か否かは、当然ながら常に問われる課題である。放電量はどのくらいか、そしてどのくらいプラズマが働くのか、癒す部分で最も重要な位置をこの絆創膏が正確に察知することに関しては研究の余地が残されている。
この絆創膏は、衛生面で一回限りの使用に適するよう開発されており、何らかの傷を持つ人たち約20人ほどが大学病院で実験に参加している。現段階で最も注視されているのは、副作用のあるなしだが、治療に差し障るような副作用はこれまで報告されていないそうだ。
2つの根拠に基づいた斬新なアイデアが世界で認められ、昨年には「未来の医療器具」として賞を受賞したこの絆創膏が、実際にいつ使用されるようになるのかは未定だが、科学が人びとの傷を癒す好例として医療現場で活用されるよう願ってやまない。
【参考】
※ Plasmapleister geneest wond – De Ingenieur
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