クーデター後初のタイなど、4つのアジア注目選挙

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2017年01月25日 06:52  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<タイ、韓国、香港、中国――目が離せない2017年の重要選挙> (写真:行政長官候補らの肖像を掲げる香港の民主化デモ)


 昨年のアジアでは劇的な変化をもたらす選挙や投票があった。台湾は1月に初の女性総統を、軍政を終わらせたミャンマー(ビルマ)は3月に54年ぶりの文民大統領を選出。5月のフィリピン大統領選では、物議を醸す言動で人気のロドリゴ・ドゥテルテが勝利を収めた。


 今年も重要な選挙は続く。その4カ国を見てみると......。


【参考記事】欧州の命運を握る重大選挙がめじろ押し


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■今年末 タイ総選挙


 タイでは14年のクーデターでインラック首相が追放されて以来、軍が実権を握っている。その軍事政権が起草した新憲法案が国民投票で承認されたのが昨年8月のこと。これを受けて軍政は、民政復帰に向けた総選挙を今年末に行うと発表した。


 憲法案は軍の影響力をさらに強化する内容だ。軍政が実質的に上院議員を任命する権限を持ち、首相は下院議員でなければならないという旧憲法の規定を削除。非民主的という批判が出ている。


 昨年11月にはプラウィット副首相が、選挙が国に損害をもたらすなら実施しないとも発言。予定どおりに実施するという政府報道官の声も報じられているが、何とも先行きは不安だ。


【参考記事】タイ軍政の世論懐柔は 「幸福」が売り


■年内 韓国大統領選


 昨年12月、議会が朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追案を可決。憲法裁判所がその可否を審理し、遅くとも6月までに結論を出す。弾劾が決まれば、60日以内に大統領選が行われる。


 たとえ罷免されなくても、朴は憲法の規定上再出馬できない。後釜を狙う候補は3人で、最も支持率が高いのは12年の大統領選で朴に負けた文在寅(ムン・ジェイン)だ。潘基文(バン・キムン)前国連事務総長も事実上、出馬を宣言した。そして「韓国のトランプ」と支持者に呼ばれる李在明(イ・ジェミョン)。主張は米民主党のバーニー・サンダースに近いが、支持率の急上昇と物議を醸す発言はトランプ米大統領の選挙戦と似ている。


【参考記事】「大統領弾劾」の余波が日韓の雪解けを直撃する


3月26日 香港行政長官選挙


 香港の最高責任者である行政長官は、各界を代表する「選挙委員会」が選出する仕組み。委員1194人の選出には中国政府の意向が反映され、親中派の人物が多く選ばれる。


 だが、中国に忠実な現職長官の梁振英(リアン・チェンイン)を嫌う香港市民は多い。14年には中国に抗議する学生主体の民主化デモ「雨傘運動」が起きた。


 梁は今回不出馬を表明しているため、中国のお気に入り候補は新民党を率いる葉劉淑儀(イエリウ・シューイー)だ。だが世論調査で支持率トップは、14年のデモを支持する曽俊華(ツォン・チュンホア)財政官。中国が彼の出馬を妨害したりすれば、再び騒動が起きるかもしれない。


【参考記事】「民主主義ってこれだ!」を香港で叫ぶ――「七一游行」体験記


■10〜11月 中国共産党大会


 新たな最高指導部を選ぶ5年に1度の共産党大会が10月か11月に開催される(正確に言えば選挙ではなく会議であり、国民は投票しない)。今年の党大会は特に重要で、中国の最高意思決定機関である政治局常務委員会7人のうち5人と、常務委員を除いた政治局委員18人のうち半数が交代する。


 確実なのは、習近平(シー・チンピン)国家主席と李克強(リー・コーチアン)首相が22年まで居座ること。だがその後継者、つまり将来の中国のリーダーは今年の政治局常務委員になる人物から選ばれることになる。


 昨年は米大統領選の話題で持ち切りだったが、今年の注目は中国の指導部選びだろう。


【参考記事】米中、日中、人民元、習体制――2017年の中国4つの予測




ミレン・ギッダ


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