ペニャニエトが「国境の壁」建設を阻止するための7つの切り札

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2017年01月26日 20:13  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<トランプに睨まれたら、どんなに関係の深い友好国も安心できない。それが、メキシコの経験から学ぶべき教訓だ>


 メキシコのエンリケ・ペニャニエト大統領は、今月31日にワシントンを訪問してドナルド・トランプ大統領と会談する予定だったが、。トランプが25日、国境に壁を建設する大統領令に一方的に署名したため、メキシコ側は訪米中止も検討しているという。


 ただ壁を作るだけではない。その費用はメキシコに払わせるというのがトランプの公約で、今も変わっていない。メキシコ側は「国家の尊厳と主権にかけて」払わないと言っているが、ひとまず米政府が負担して後でメキシコに請求しようという既成事実化も進む。


【参考記事】トランプの「嘘」まとめ(就任式、対日要求ほか)


 遅かれ早かれ、トランプと対決しなければならないペニャニエトには、7つの切り札がある。


アメリカの雇用に貢献


 トランプが大好きなテーマだ。アメリカの約600万人の雇用は、メキシコへの輸出に依存する。なかでも貿易比率が高いカリフォルニア州とテキサス州は、メキシコ関連の雇用が飛びぬけて多い。事実、BRICsの4カ国を合わせたよりもメキシコの方がアメリカ製品を多く輸入している。


移民は経済成長にプラスの効果


 メキシコからの移民がどれほどアメリカのGDP(国内総生産)を押し上げるのか、正確な数字で示すのは難しい。ただ、米シンクタンクの移民研究センターが推計した1.93%(2014年)にしても、米メディアのビジネス・インサイダーが算出した4%(2012年)にしても、その数字がゼロより大きいのは明らかだ。昨年9月に米学術機関の全米アカデミーズが発表した報告書は、移民はアメリカの雇用を奪わないと結論付けた。


【参考記事】トランプのメキシコ系判事差別で共和党ドン引き


メキシコは農産物の輸出先


 メキシコは、アメリカの農産物にとって世界で3番目に大きい輸出市場だ。2014年にアメリカは全農産物の13%をメキシコに輸出し、その売り上げは195億ドルに上る。


貿易全体でも重要な相手国


 在メキシコ米国大使館によると、メキシコはアメリカにとって第3の貿易相手国だ。1日当たりの2国間の貿易額は15億ドルに上る。


アボカド


 アメリカで絶大な人気を誇る果物。米シンクタンク大西洋評議会によると、アメリカで消費されるアボカドの80%は、世界最大の産地メキシコから輸入されている。それがトランプの大統領就任後は、アボカドを満載したトラックが国境沿いで足止めされた。カウチでもスポーツ観戦に欠かせないグアカモレ(アボカドチップ)をトランプのせいで食べられなくなれば、有権者は決していい気はしないだろう。


【参考記事】トランプごときの指示は受けない──EU首脳が誇り高く反論


治安


「メキシコとの国境の壁」を造るというトランプお気に入りの公約について、メキシコ政府は繰り返し「絶対に払わない」とする立場を明確にした。だが同時に、ペニャニエト政権はこれまで1000億ドル近くを投じ、米政府と協力して国境沿いの麻薬密輸や組織犯罪の取り締まりを強化してきた。アメリカがどうしても壁の費用を徴収するというなら、ペニャニエトはこの資金を引き揚げると脅してみることも可能だ。


観光


 アメリカで観光ビジネスが活況なのは、メキシコの力が大きい。米国務省によると、2013年だけで1400万人のメキシコ人観光客が訪米し、彼らがアメリカに落としたお金は推計105億ドル。アメリカ人として一番人気があるのもメキシコだ。


──もっとも、こんな正論が通じる相手なら、もともとこんなやり方で隣の友好国を敵に回したりはしないだろうが。


From Foreign Policy Magazine




ロビー・グレイマー、エミリー・タムキン


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  • こういうのを「希望的観測」と言うのだろう。
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