夫婦の別居・離婚後、離れて暮らす側の親が、子どもと会うことを「面会交流」という。回数や方法については、民法においても具体的な取り決めはなく、原則として、父母が話し合って決めることになる。
しかし、別居・離婚にいたった夫婦にとって、「面会交流」は容易に進むとはかぎらない。特に、一方が子を連れて別居し、残された側にしてみれば「連れ去りだ」となるようなケースでは、困難を極める。
本書は、「家に帰ったら、配偶者と子どもがいなくなっていた」「家を離れたきり帰ってこなくなった」「追い出されて会えなくなった」当事者の父親たちの声を拾う。著者の西牟田靖氏は、「本で床は抜けるのか」などの著書があるノンフィクション作家だが、自身も「妻が3歳の子どもを連れて出ていき、夫婦関係が破綻した」当事者の1人でもある。
本に収められた父親たちの悲痛な声は、実に生々しく、読む者の心をえぐる。インタビュアーとしての著者の力量もあってのことだが、著者の筆致をとおして、読者は父親の吐露を直接聞いたかのような衝撃を覚える。
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「わが子」にとって何が最良なのか。それは子をもつ親なら誰しもが折にふれ、ぶつかる課題だろう。勝ち・負けもなければ、正解・不正解があるわけでもない。どのような面会交流の形が望ましいのかに一律の解はなく、個別事情に大きく左右される難しい問題だ。
離婚後の子どもの養育をめぐっては、養育費の支払いをどう促していくのかという課題もある。個人の感情を脇に置き、「わが子」のために考えを尽くしていくためにも、どのような法整備、社会的な支援が望ましいのか。考えさせられる一冊だ。
(弁護士ドットコムニュース)
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