マンション上階は「パン屋」、生地を叩く音や練り機の音が不快…やめさせるには?

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2017年02月13日 10:33  弁護士ドットコム

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マンションの上階に住む人がパン屋と料理教室を営んでおり、騒音が苦痛だという男性が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに相談を寄せました。


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男性が住んでいるのは、4階建て26戸の小規模マンション。そのマンション内で上階の住人が、「パン屋(製造、デパートへの出荷、自宅での個別販売など)と料理教室など複数の事業」を手広く営んでいるそうです。


悩ましいのは、その住人宅からの騒音です。「パンを作る際のパン生地練り機のゴウゴウ音(自宅にある洗濯機の音と同様のゴウゴウ音に近い音)やパン生地を練る際のたたきつける音が、早朝、午前中に頻繁にして、悩んでいます」と語ります。男性が「音がするので配慮をお願いしたい」と申し入れても、「注意をしているので物音はしないはずだ」との一点張りで埒があかないそうです。


男性は、生活の場としてのマンションで、パン屋や料理教室などの「業」を営むことや、そのために騒音が発生していることを問題に思っているようです。上階の住人に対して、パン屋の経営や騒音をやめてもらえるよう要求することはできるのでしょうか。関戸 淳平弁護士に聞きました。


●ポイントは「騒音が受忍限度を超えているかどうか」

他人にとって「不快な音」をすべて違法とすると、社会生活が不可能となってしまいます。そのため、裁判では、騒音が違法となるかどうかは、「受忍限度」を超えているかどうかで判断されます。


「受忍限度」を超えるかどうかは、周辺環境、騒音の大きさ、原因、時間帯などによって異なります。条例の規制値を超えているかどうかも、重要な判断要素です。騒音に違法性が認められる場合には、差止請求や損害賠償請求が認められます。


ここでのポイントは、あくまで騒音が「受忍限度」を超えるかどうかです。店舗経営が管理規約に違反しているかどうかと、それによる騒音が違法となるかどうかは、厳密には別の問題です。


もっとも、店舗経営を禁ずる管理規約がある場合には、騒音の違法性が認められやすくなります。また、管理規約があれば、それを根拠に、管理組合から営業の差し止めを請求してもらう方法もあります。


騒音の違法性が強い場合には、営業の差し止めを請求することができます。裁判例では、スナックのカラオケ騒音について、午後10時から翌朝8時までの間が受忍限度を超えるものとして、その時間帯のカラオケ装置の使用禁止を認めた例があります。この裁判例に基づけば、ご相談の件も、早朝の時間帯については差し止めが認められる可能性があるでしょう。


差し止めまでは認められない場合でも、慰謝料の請求が認められることがあります。金額はケースバイケースですが、10〜100万円程度の例が多いようです。騒音との因果関係が認められれば、通院した場合の治療費や、騒音測定費用などの賠償請求が認められることもあります。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
関戸 淳平(せきど・じゅんぺい)弁護士
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。
事務所名:横浜ユーリス法律事務所
事務所URL:http://www.jurislaw.jp/


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