2016年から0歳児に対するワクチン定期接種も開始
武蔵野赤十字病院 泉並木先生
肝細胞がんの原因としてC型肝炎の次に多く、肝硬変の原因としてはC型肝炎やアルコールの次に多い疾患、それがB型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで発症するB型肝炎です。
B型慢性肝疾患治療薬「ベムリディ(R)錠」(一般名:テノホビル アラフェナミドフマル酸塩)を発売したギリアド・サイエンシズ株式会社が、2月16日に都内でメディアセミナーを開催。武蔵野赤十字病院の泉並木先生が「B型肝炎の経過と発癌防止のための長期治療の新たな戦略」と題して講演を行いました。
HBVは感染後、直接、肝臓を攻撃することはありません。肝細胞に入り込んだウイルスが異物と判断されることで、免疫が攻撃を開始します。この時、免疫はウイルスだけでなく、ウイルスが潜んでいる肝細胞に攻撃を行います。その結果、肝細胞が壊れ、肝臓全体で炎症が起こり、B型肝炎となります。HBVに感染した全ての人がB型肝炎を発症するわけではありません。自己免疫が優位になり、HBV増殖が持続的に低下する非活動性キャリア、乳幼児や小児期など免疫系が未発達のため、自己免疫がHBVを異物として認識せず肝炎が起こらない無症候性キャリアという病態もあります。ただし、無症候性キャリアの場合、成長して思春期以降になると、免疫系が発達し、HBVを異物として認識し、B型肝炎を発症する場合があります。「感染者数は世界で20億人と、HBVは世界で最も感染者数が多いウイルスといえます」(泉先生)。国内においては、1986年に母子感染予防策が導入されて以来、HBVキャリアは劇的に減少。2016年10月からは、0歳児に対するB型肝炎ワクチンの定期接種も始まっています。
日本国内で約50万人が「自らのHBV感染を知らない」
「母子感染が原因の若い世代のHBV感染は減少しましたが、一方で、中高年の発症が増加しています」と泉先生。現在のB型肝炎治療の現状と求められる点として、「患者さんの主な世代が高齢化している」「現在のB型肝炎治療は長期間にわたる」ことを挙げました。「高齢化に伴う、様々な生理的な背景からはより安全性の高い薬剤が、そして、長期治療の観点からは、長期服用に伴う副作用の軽減が重要です」(泉先生)
泉先生は、「幼少期からのワクチン接種が世界的に行われたことで、B型肝炎ウイルスの感染経路は限定されてきています。しかし、放置することで生命に危険を及ぼす可能性があるだけでなく、B型慢性肝疾患は完治が難しく、治療は長期にわたります」と、予防ならびに安全な薬剤による治療の重要性を訴えました。
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これまでの研究では、HBVに感染した人は糖尿病や高血圧、脂質異常症や骨粗しょう症など併発疾患のリスクが上昇することがわかっています。しかし、日本国内にいるとされる110〜140万人のHBV感染者のうち、約10%が慢性肝炎を発症するとされていますが、約50万人が自らのHBV感染を知らない、といわれています。また、最近ではピアスや刺青などが原因による若者の感染例も報告されています。まだ“過去の病気”とはいうにはほど遠いB型肝炎。多くの人が“自分ごと”として受け取ってほしい病気のひとつです。(QLife編集部)
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