アメリカ流「餃子の作り方」に物申す⁉

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2017年02月26日 17:22  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<食専門の人気テレビ局がFacebookに投稿した「餃子の作り方」動画が、あまりにもヒドい! 案の定コメント欄は炎上しているが......>


最近、日本では「餃子ブーム」が起きていると聞く。一方、和食人気に沸くここニューヨークでは「日本の餃子」は今もスシやラーメンのような市民権を獲得しておらず、日系ラーメン店のサイドメニューか、IZAKAYA(居酒屋)にある一皿という扱いだ。ニューヨーカーにとって、餃子は小籠包を含む「ダンプリング」カテゴリーの一種であり、まだまだ中華料理なのだろう。


餃子の街・宇都宮出身の私としては寂しい限り。何とかして餃子を「和食」として認知させたいと意気込んでいたところ、先日驚くべきニュースが飛び込んできた。


朝起きてFacebookを開くと、料理番組でアメリカ人女性が「餃子の作り方」を教えている。アメリカ人も餃子を作るようになったのか、と驚いたのも束の間、観ていてギョッとした。「ポーク・ダンプリング」として紹介されているのは、今まで見たこともない餃子だったからだ。


動画を提供しているのは、アメリカ版『料理の鉄人』を放送したこともある食専門の人気テレビ局「フード・ネットワーク」。真っ赤なマニキュアをした女性がキャベツや白菜、ニラを入れない代わりに細ネギを千切りにして炒め、豚挽肉にまさかの卵を投入。オイスターソースではなく甘味噌である海鮮醤を垂らしている......。この動画が、アップされてから1日で200万回以上も再生されていた。


FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアで「フェイクニュース」が拡散し、受け手それぞれに「ファクトチェック(事実確認)」をする姿勢が求められるなか、この餃子動画に思わず「フェイク餃子に気を付けて!」と言いたくなった。


【参考記事】ネットに広がる「フェイク・ニュース」― 嘘と真実の見分け方とは


人々の情報ソースとして、ここ数年で特に成長しているのがソーシャルメディア上に流れる「動画」だが、そのうち動物と料理を取り上げたものは多くのオーディエンスを獲得するキラーコンテンツの代表格。Facebookの動画再生回数は1日に80億回を超えるというから、この餃子動画も世界中に拡散されているに違いない。


フード・ネットワーク局にフェイクニュースの意図はないにしても、これを餃子と紹介するのはいかがなものか――。そう思っていたところ、案の定Facebookのコメント欄が炎上していた。


中国系とみられる人たちからの批判的なコメントが多いなか、なかには「これは彼女流のポーク・ダンプリングの作り方だ。これが正真正銘の中華ダンプリングとは言っていない。怒るほどのことではない」といったコメントも。


確かに、ネット上にこれだけ「我流」レシピが氾濫しているのを見ると、全ての人が「正統なレシピ」を求めているとは限らないし、そもそもアレンジしたらフェイクなのか、という疑問もある。「味の好みは人それぞれだ。彼女は彼女のレシピを使っただけで、それを美味しいと思うのであればいいじゃないか」というコメントも腑に落ちた。料理レシピに限っては、「フェイク」という概念は当てはまらないということなのか。


日中「餃子」戦争の勃発に備えて


ニューヨークに来たばかりの頃はおよそ「和食」とは呼びたくない代物を出す「ジャパニーズレストラン」に目くじらを立てていたこともあったが、そうした和食を美味しいと慣れ親しんだ人たちが、いつか「本場の和食を食べたい」と日本を目指してくれればいいのかもしれない。


【参考記事】インチキ和食屋に感謝せよ


最近もイタリア系アメリカ人から「ニューヨークはピザが有名だが、あんなものはピザではない」と聞いて笑ったのだが、一方でイタリアには「本場のピザ」があるという言い方はできたとしても、これは「本物」のピザ、こちらは「偽物」という線引きは難しいだろう。


それを言ってしまうと、日本で食べるピザやニューヨークのデリでサンドイッチのように売られているスシなど、ご当地バージョンに姿を変えたものはすべて偽物になってしまう。もっと言えば、本場の味を追求できるかどうかは場所に限らず、店であれ家庭であれ、作り手の腕次第だ。


アメリカ人の間で餃子ブームが起きたとき、彼らが「本場」として目指すのは中国なのか日本なのか。今はアメリカ流の餃子に物申すよりも、餃子戦争が勃発したときに備えて日本の餃子の魅力を伝えるほうに専念したほうがいいのかもしれない。


先日、ニューヨークで大人気の日本人シェフ・萩原好司さん(居酒屋「六ツ木」料理長で、専門は中華料理)に絶品餃子の作り方を伝授してもらったので、次のページで紹介します。餃子好きの皆さん、外国人に美味しい餃子をたらふく振舞って、「本場は日本だ」と言い張りましょう。


餃子を焼く萩原好司シェフ Photo: Kenji Takigami


萩原好司さん流「焼き餃子」の作り方


材料(約60個分)


〇キャベツ 大 1/4個


〇ニラ 1束


〇豚挽き肉 450g(1ポンド)


〇生姜 1かけ


〇春雨 1/2パック


〇白胡椒 大さじ 1/4


〇塩 小さじ 1/4


〇オイスターソース 大さじ1


〇ごま油 大さじ 1と1/4


Photo: Takuya Katsumura


<焼くとき>


〇ごま油 適量


〇水 適量


〇小麦粉 適量


<作り方>


1)豚ひき肉と皮は冷蔵庫から出して、常温に戻しておく。


2)キャベツを微塵切りにして塩をふり、両手で掴んで絞るようにしてもむ。水を出し切ったら、水を出したボールにそのまま入れて置いておく。


*ポイント:水分(アク)を全て出しきるまで、強くもむのがポイント。


3)豚挽き肉をボールに入れて手でこねる。脂の白い部分がなくなって、赤身と混ざってピンク色になればOK。


4)春雨をお湯で戻し、1センチ幅に切る。生姜を微塵切りにする。


*ポイント:生姜はおろすのではなく、微塵切りにする。萩原流にはニンニクは入らないが、入れたい場合は生姜の1/5の量をお好みで。


5)3)に春雨と生姜を入れて混ぜる。さらに白胡椒、塩、ごま油、オイスターソースを入れて、手でよくこねる。


6)水切りしたキャベツを再び固く絞ってから5)のボールに入れ、こねるようにして混ぜる。


7)ニラを1ミリ幅の千切りにして、6)に入れて混ぜる。


*ポイント:ニラから水分が出るのを避けるため、ニラは最後に入れる。


8)7)で出来たタネを餃子の皮で包む。


*ポイント:タネは冷蔵庫で少し寝かせておいたほうが、固くなって包みやすい。


9)フライパンを強火で熱してから、ごま油を2ミリくらい加える。餃子を丸く並べてから、すぐに小麦粉を溶いた水を回しかけて蓋をする。水の量は、餃子の頭が少し出るくらいまでたっぷり入れる。水400ccに対して小麦粉大さじ1が目安。


10)5〜10分くらい、強火のまま蒸し焼きにする。もう少しで水がなくなりそう、というタイミングで蓋を取り、ごま油を餃子の上からすべての餃子に行き渡るように回しかける。水が飛んで餃子の周りに羽根が出来たら、火を止める。


11)餃子を羽根ごとヘラではがし、ひっくり返すようにして皿に乗せて、出来上がり!


Photo: Takuya Katsumura


萩原好司シェフ:昨年末までニューヨークで行列のできる大人気もつ鍋店「博多トントン」で8年間料理長を務め、今月初めには鉄板焼きのベニハナの青木恵子CEOとタッグを組んでマンハッタンに居酒屋「六ツ木(ROKI)」をオープン。六ツ木では、特製「鉄板焼き棒餃子」「蒸し餃子」「茹で餃子」の3種類を提供中。




小暮聡子(ニューヨーク支局)


このニュースに関するつぶやき

  • 餃子が和食とかアホか?更に、他国で派生した料理にケチを付けるとか恥を知れ(#^ω^) アメリカ流「餃子の作り方」に物申す (ニューズウィーク日本版 - 02/26 17:22)
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