2〜5%の子どもにある自閉スペクトラム症「わかり合えているようで、通じていないことも」

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2017年03月07日 18:02  QLife(キューライフ)

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「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などを意味するASD


筑波大学 副学長・理事 宮本信也先生

 自閉症の特性をもつ障害について、これまでは、典型的な「自閉症」に加え、特性の目立ち方や言葉の遅れの有無などによって「アスペルガー症候群」「特定不能の広汎性発達障害」などに分けられていました。しかし、これらには、対人関係の難しさやこだわりの強さなど、共通した特性が認められることから、近年ではひとつの集合体として捉えようとする考え方が出てきており、これらを包括的に「自閉スペクトラム症(ASD)」と分類しています。

 周囲に理解されにくくストレスがつのりやすいASDの子どもは、頭痛や腹痛、食欲不振、チックなどの身体症状に加え、不安やうつ、緊張、興奮しやすさなどの精神症状、そして、不登校やひきこもり、暴言・暴力、自傷行為などを引き起こしやすく、ASDに対する理解促進が課題となっています。子どもの20〜50人に1人が診断されるとのデータもあるASDについて、大塚製薬株式会社が2月28日、都内でプレスセミナーを開催。筑波大学副学長・理事で、同大学附属学校教育局教育長の宮本信也先生が講演を行いました。

 「ASDの子どもは特別支援学級などではなく、通常学級にいるほうが多く、知能が正常な子の割合はASD全体の50〜70%と考えられています」と宮本先生。その特徴として、考え・気持ち・感情のやりとりがうまくいかない『コミュニケーションの問題』と、一度気に入るとそればっかりになる『特定の関心・行動の繰り返し』の2つを挙げました。「こうした特徴は、『マイペース』『話が通じにくい』『しつこい』と言うこともできます。ASDの人は特別な存在のように見えますが、そんなことはありません」(宮本先生)。ASDの診断基準は、「特性により生活で困難が生じているか」がポイントになるとのこと。支援のひとつとして、適応がある場合には薬物療法が行われますが、「発達障害に対する薬はほとんどありません」と課題も挙げました。

「知能が正常でも、言葉の意味がわかっていないことも」(宮本先生)

 宮本先生はさらに、大きな問題として「言葉の問題」を挙げました。「ASDの人は、知能が正常であっても、言葉の意味がわかっていないということがよくあります。言葉というのは、辞書のように覚えるのではなくて、生まれてからずっと見たり聞いたり触ったりして、本質的な意味を実感していきます。ASDの人はそれができず、言葉を自分の体験した範囲でしか理解しないのです」。宮本先生は、ASDで診察に来た男子高校生のエピソードを紹介しました。

 「うちの母親は手抜きで困る。家庭の食事に野菜を出さない。家族の健康を守る立場の主婦として失格だ」と語っていたその男子高校生。ところが母親に聞くと、サラダや煮物、味噌汁、漬け物など食事の随所に野菜を取り入れていた、とのこと。数か月後の再診時、その男子高校生が「キャベツ」だけを「野菜」と理解していたことがわかったそうです。

 「通じている、わかり合えているようで、実はお互い違う意味で理解していて、通じていない、しかもそのことに気がついていないということがあります」(宮本先生)。

 「私たちが見ているもの、聞いているもの、感じているもの、それらはみんな、本当に『同じもの』なのでしょうか。自閉スペクトラム症は、この根本的な問いかけを私たちに投げかけている、ともいえるかもしれません」と宮本先生。一人ひとりの特性に合った支援を行うためにも、まずはASDを理解することが重要なのではないでしょうか。(QLife編集部)

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  • レアケースを例示したら余計に変な誤解を生むから、当事者には迷惑なんだけど。
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