発症後8時間以内の治療がカギ。進化する急性期の脳梗塞治療

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2017年03月08日 18:02  QLife(キューライフ)

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脳梗塞は3タイプ。最もキケンなのは「心原性脳塞栓症」


兵庫医科大学 脳神経外科学講座  吉村紳一先生

 血の固まり(血栓)などが脳の血管を詰まらせる脳梗塞は、血栓から先の血流が途絶えて脳細胞が壊死するため、命は助かっても重いマヒや言語障害などの後遺症が残ることも少なくありません。その脳梗塞の最新治療について、医療機器メーカーの日本メドトロニック株式会社がメディアセミナーを2月27日に開催。兵庫医科大学脳神経外科学講座の吉村紳一先生が講演を行いました。

 脳梗塞には、大きく分けて細い血管が詰まる「ラクナ梗塞」と、動脈硬化により血管が細くなって詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、心臓にできた血栓によって脳の太い血管が詰まる「心原性脳塞栓症」があります。吉村先生によると、これらのうち最も危険なのは心原性脳塞栓症で、たった一度の塞栓で重症になることから、「ノックアウト型脳梗塞」とも呼ばれているそうです。

 脳梗塞のうちアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症については、2005年から血栓を溶かすt-PAを点滴投与する「t-PA静注療法」が保険適用になりました。しかし、「4.5時間以内という制限や、ほかに病気があるなどで薬が使えない禁忌があるため、現在でも脳梗塞患者全体の5%未満、年間約1万人の患者さんしかこの治療を受けていない」(吉村先生)といいます。

「顔がゆがむ」など脳梗塞の予兆が出たらすぐに受診

 講演では「脳梗塞を発症しても早い段階で治療を開始できれば、脳細胞の壊死を防ぎ、死亡や後遺症のリスクを減らせる」と吉村先生。現在、注目されている治療法のひとつが、血管内にカテーテルという細い管を入れて血栓を回収する「血栓回収療法」です。わが国では、t-PA静注療法が効かない人や禁忌で静注できない人、発症から8時間以内など、いくつかの条件を満たした人に対し、健康保険が適用されます。

 血管内治療群は通常治療群に比べ回復の程度が高いことが分かったオランダの研究など、血栓回収療法の効果は、国内外で実施された複数の研究で報告されています。こうした結果を受け、アメリカでは2015年に脳卒中のガイドラインが改訂され、血管内治療を推奨する記述が加わりました。

 脳梗塞患者さんの新たな治療選択肢のひとつとなった血栓回収療法ですが、課題も。吉村先生が挙げるのは、専門医の不足や医療機関の連携不足などのため、治療を行える地域が限られていることです。現在、吉村先生も所属する日本脳神経血管内治療学会では地域差などの実態を調査中ですが、どの地域でも等しく血栓回収療法を受けられるよう、専門医の育成や、救急隊員や病院の連携体制の構築などを進める必要があるといいます。

 講演の最後には吉村先生が「早期治療のためには早期発見が重要」と脳梗塞の兆候について紹介。「脳梗塞の代表的な兆候は“顔がゆがむ”“片腕が上がらない”“うまくしゃべれなくなる”の3つ。症状があったら『朝まで待って…』などと遠慮せず、救急車を呼ぶなどして医療機関を受診してほしい」と訴えました。(大原ケイコ)

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