実力派コピーライターが教える、「伝わる言葉」のつくり方

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2017年03月17日 15:04  新刊JP

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新刊JP

『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社刊)
■「伝える」の意味をとらえ直す「伝え方」

「世界は誰かの仕事でできている」
「バイトするなら、タウンワーク」


このキャッチコピーを見聞きした覚えのある人は多いだろう。
缶コーヒーの「ジョージア」、バイト情報「タウンワーク」のCMで使われているコピーだ。

この二つのコピー、じつは同じ人物が出がけている。CM総合研究所が選ぶコピーライターランキングに2014年と2015年の二年連続で選出されたコピーライターの鬼才・梅田悟司氏だ。

彼の著作が今、にわかに注目を浴びている。
2016年8月に刊行された『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社刊)が、重版をくり返し、10万部のヒット作となっているのだ。

ビジネスシーンで、プライベートのコミュニケーションで、人と話したり文章を書いたりすることは避けられない。それゆえ、言葉や文章を伝えるためにはどうすればいいかで悩んでいる人は多い。

今まで、話し方、メールや企画書の書き方といった「伝える」ための方法を説いた指南本は数多くあった。

だが、本書は、それまでのコミュニケーション術、文章術とは根幹が違う。コミュニケーションや、その裏にある思考力を培うために大いに役立つ一冊だ。



■「伝える」ためには「内なる言葉」で意見を育てる

著者は「言葉が意見を伝える道具であるならば、まず意見を育てる必要がある」と述べる。

多くの人は、「外に向かう言葉」、つまり、どう言うか、どう書くか、だけを考えてしまう。だから、伝わりやすいフレーズや文章の書き方を学ぼうとする。
しかし、きちんと伝わるように言ったり書いたりするためには、

(1)意見を育てる
(2)意見を言葉に変換する


というプロセスを踏むことが必要なのだ。

言いたいこと、書きたいことが定まっていない状態では、どんなにテクニックを使っても伝えることなどできない。

たとえば、映画を見て、その面白さを誰かに伝えるとき、「とにかく面白かったから見てみてよ!」と言っても相手の心には刺さらない。むしろ、「なんだか浅い感想だな」と思われ、相手は自分の見た映画に興味を示すことはないだろうか。

何が、どこが、どのように面白かったのか。それらをきちんと伝えられないと「外に向かう言葉」はなんの力も持たないのである。

つまり、何かをきちんと伝えるためには、自分の頭の中で生まれてくる思考や感覚といった「内なる言葉」をきちんと「意見」としてまとめ、「外に向かう言葉」に変換にしなくてはならないのだ。

■「内なる言葉」を「外に向かう言葉」に変換する

本書の前半では「内なる言葉」といかに向き合い、それを抽象的ではなく、しっかりと「意見」に昇華させるための方法が。後半では効果的に「外に向かう言葉」に変換するための方法が説かれている。

「外に向かう言葉」への変換は、「内なる言葉」を磨いてこそ効果を発揮することが前提ではあるが、言葉のプロが教える「外に向かう言葉」への変換テクニックは興味深いので、いくつか挙げておこう。

著者は思いを言葉にするには二つの戦略があると述べている。

そのうちのひとつは、「言葉の型を知ること」だ。

著者曰く、中学までに習ったはずの言葉の型を使うことが、自身の言葉を強くする最短距離だという。

その型とは、次の5つ。

(1)たとえる(比喩・擬人)
(2)繰り返す(反復)
(3)ギャップをつくる(対句)
(4)言いきる(断定)
(5)感じる言葉を使う(呼びかけ、誇張・擬態)


本書では、この型を有名な言葉を例に、その効用を解説している。
たとえば、(1)「たとえる」では、

「今一度日本を洗濯致し候。」(坂本龍馬)

という言葉が挙げられている。

坂本龍馬が意図するところは、「今一度、日本を新しくしたい」ということだ。それを「洗濯」にたとえることで、聞き手側には「なるほど。きれいさっぱり洗いたいのか」と理解を進めることに成功している。

坂本龍馬にはしっかりした将来のビジョンがあったのだろう。その「内なる言葉」を整理し、自分の言葉として「外に向かう言葉」に変換しているので、伝わる言葉になっているのである。

表面的なテクニックを知識として覚えても、テクニックを活かす素材が悪ければどうしようもない。サッカーボールを蹴るためのテクニックを知っていても、実際に蹴れる筋力や身体感覚がなければ、サッカーは上手くならないのだ。
これは伝えることも同じだ。

本書は、伝えるためのテクニックとそれを支える感覚やセンス、その両方を伸ばす方法を学べる。新社会人や新生活を始める人、ビジネスシーンからプライベートまで、多くの人に必要な一冊だろう。

(新刊JP編集部/大村佑介)

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