【小物王のつぶやき】「好きに使える」から面白い! 手帳のエポックとしての「ほぼ日手帳」

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2017年03月17日 21:01  citrus

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出典:「ほぼ日ストア」より

何となく、普通に「手帳」と言ってるけど、調べてみると、手帳という言葉が指す意味は物凄く広いし、時代によって変わっていたりして、何だかややこしい。現在、手帳の使い方は、大きく二つに分かれていて、一つは、スケジュール管理、つまり未来を書くものとしての手帳。もう一つは、ライフログとか日記とか、旅の思い出とか、そういうものを書く、いわば過去を記録するもの。

 

思いついたネタを書き留める、いわゆるネタ帳的な使い方は、スケジュール管理と合わせて未来に向かうし、名言などを記録するのはデータのアーカイブなので過去向き、といった具合に、大体、この二つの使い方に収まっている。あと、自己啓発用というのもあるけど、あれは特殊というか、ちょっと考え方の方向が変わるので、ここでは置いておく。

 

 

■元々の役割はメモ帳みたいなものだった?

 

ただ、歴史を振り返ると、元々は手帳は、日記に近いメモ帳という感じで使われていたようだ。今日、何食べたとか、こういうものを見たら面白かったとか、そういった事を思い立ったらすぐ書ける携帯型のノート。文豪の手帳とか、昔の学者の手帳などを見ると、大体、そんな感じだ。どこででも書けるリアルタイムの日記として、ポケットに入るコンパクトなサイズが必要だったのだろう。また、とにかくコンパクトで持ち歩きやすければ、大体手帳と呼ばれていて、生徒手帳や警察手帳、歌舞伎手帳やら母子手帳、それこそ、あの「座頭市」の原作である子母沢寛(しもざわ・かん)のエッセイが収録されている本は「ふところ手帖」というくらいで、もう何でも手帳だったのだ。

 

 

■スケジュール管理ツールとしての手帳

 

日本人が手帳を時間管理のツールとして手帳を使い始めるのは、1960年くらいからのようだ。現在のNOLTY、当時の能率手帳が日本で初めて、時間軸が入った手帳を一般向けに発売したのが1959年、そして、時間管理の方法として今では当たり前になったバーチカル型のフォーマットをフランスの医師が考案したのが1952年。後にクオバディスとなる、その手帳が日本にはいってきたのが1970年代の初頭。そして、そのバーチカル型というフォーマットが、それなりに世間に認知されるのは2000年代に入ってからだ。その間に、今の若い人は知らないであろう「システム手帳」のブームがやって来る。ただ、この「システム手帳」は今で言う手帳とは多少考え方が違っていて、どちらかというとパソコンやスマートフォンに近い、必要な情報は全部、その中に収納して持ち歩いてしまおう、というもので、それをバインダー型の手帳で強引に行っていたのだ。だから、パソコンの普及とともにブームが去ってしまった。実は最近、また新しい形で普及しつつあるのだけど、それは別の話。

 

ともあれ、言いたいのは、手帳でスケジュール管理というのは、結構新しい使い方だということ。しかも、基本的に手帳は会社から支給されるもので、自分で買うものではなかったし、その程度の機能で足りるほど、仕事はルーティーン化され、特別な日だけ手帳に書き込む程度で仕事は回っていたのだ。

 

 

■ビジネス向きじゃなかった「ほぼ日手帳」

 

「ほぼ日手帳」が最初に発売されたのは、2002年。システム手帳のブームが去り、一部のクリエイターなどの間で、クオバディスの手帳が流行っていた頃だ。そして、まだ会社の多くは自社で手帳を配っていた。そこに、「仕事にもプライベートにも使えて、その両方をいっぺんに書ける手帳」として登場したのが、「ほぼ日手帳」だった。1日1ページのバーチカル型というスタイルも、紙面が方眼罫になっていることも、新しかったけれど、基本、手帳に書くことがなかったビジネスマンからは、ビジネス向きではないと評されて、主に自由業者と主婦だけが飛びつく感じで、ひっそりと話題になった程度だった。

 

それは、学生時代、文庫本を手帳代わりにしていたという糸井重里氏が、自分が使いたいものを、と作り始めたのだから、ビジネスマン向きであるはずはない。ただ、公私混同で使えて、好きなように書けて、余分な物が付いていない「ほぼ日手帳」は、私たち自由業者にとっては、初めて、「君たちのための手帳だよ」と言われたような気がしたのも確かだ。そんな手帳は、この世になかったのだから。クオバディスの手帳は、その正方形の判型や、日付などの書体のカッコ良さなどから、多くの自由業者が使っていたけれど、しかし、あれはとてもビジネスマンに特化した手帳なのだ。そもそもフランスではビジネスマン以外、手帳は買わないらしいし。

 

 

■どう使ってもいい手帳の面白さ

 

そして、「ほぼ日手帳」は少しづつ、世間に浸透していく。「こんな人が、こんな風に使ってますよ」という形で、使用例をどんどん見せて、「どう使ってもいい手帳が手元にある面白さ」を伝えていった。紙面にチケットなどを直接貼り付けるなんてスタイルを広めたのも「ほぼ日手帳」だ。そのあたりから、いわゆるライフログ型の手帳も少しづつ登場し、さらには、時間管理術とセットで手帳ブームが来てしまう。そうして、現在の、過去向きと未来向きの二方向の手帳の時代になるのだけれど、この「ほぼ日手帳」は、その真ん中にあって、使う人によってどちらにも使える手帳なのだ。最初から、そう設計されている。「好きに使えばいい」というのは、そういうことだ。

 

自由度が高いと敷居も高くなるのは、手帳に限った話ではないが、手帳ブームやクラフトブーム、筆記具ブームが、色んなお手本を見せてくれた。「ほぼ日手帳」を使う下地は、いつの間にか出来上がったのだ。「ほぼ日手帳」側も、「カズン」「WEEKS」などを出して、歩み寄りを見せた。そういう意味では、自由業者のための手帳ではなくなってしまって寂しくもあるけれど、実のところ、基本的なフォーマットはほとんど変わっていない。で、そのエッセンスだけを抽出したような英語版の「Planner」は、現代の自由業者専用手帳なんじゃないかと思っている。

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