腎臓病の悪化を防ぐメカニズムを解明

5

2017年03月27日 12:01  QLife(キューライフ)

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

QLife(キューライフ)

甲状腺ホルモンに腎障害の進行を抑える役割


画像はリリースより

 成人の8人に1人が患者といわれる「慢性腎臓病(CKD)」。メタボリックシンドロームなどが原因で腎機能が低下し、悪化すると腎臓がほとんど機能しない「末期腎不全」になる病気です。末期腎不全になると透析療法が必要となり、国内では毎年約3万8000人が透析を始めていると推計されています。

 透析療法には、血液透析と腹膜透析の2種類があり、血液透析では、人工腎臓(ダイアライザー)を利用して血液中の老廃物をろ過します。1回に4時間ほどかかり、週3回程度通院して治療を受けるのが一般的です。腹膜透析は、腹部に挿入した専用のカテーテルを通して老廃物を取り除くもので、自宅で行えます。通院の手間は省けますが、1日3〜4回行う必要があります。いずれの方法も、患者さんや家族にとって負担の大きい治療といえます。

 CKDの新たな治療法を開発しようと研究を進めている山梨大学大学院総合研究部の古屋文彦講師、北村健一郎教授らの研究グループは、マウスを使った実験で、甲状腺で作られる「甲状腺ホルモン」に腎障害の進行を抑える役割があることを世界で初めて明らかにしました。

透析療法回避のための新たな治療法開発へ

「甲状腺ホルモン受容体」は、全身の細胞に発現して、甲状腺ホルモンの作用を伝えています。一方、甲状腺ホルモンが低下した人では、甲状腺ホルモン受容体の作用が弱くなり、動脈硬化やメタボリックシンドロームになるリスクが高いことが指摘されています。

 近年、白血球の一種である「マクロファージ」が、生体内の代謝産物にも応答して炎症反応を起こすことがわかってきました。メタボリックシンドロームの患者さんに多い、動脈硬化病変にもマクロファージが関わっており、炎症性サイトカインを産生して慢性的な炎症を進めて組織の破壊をおこす組織障害性マクロファージと、線維化を進めて炎症を収束させる組織修復性マクロファージが存在することが知られています。

 CKD患者さんの腎臓では、炎症細胞としての「マクロファージ」による「慢性的な炎症」が、尿細管間質の線維化や動脈硬化の原因となっています。この炎症を軽減、収束させることができれば、腎機能の悪化を阻止することができるかもしれません。また、マクロファージに発現している甲状腺ホルモン受容体が、炎症細胞が持つ悪い働きを抑制することができれば、CKDやメタボリックシンドロームの合併症の新しい治療法の開発につながることが期待できます。

 研究グループは、甲状腺ホルモンの作用を伝える受容体が欠損したマウスを作成。このマウスの片側尿管を縛ったCKDモデルマウスを作ったところ、通常のマウスと比べて、尿細管間質が繊維化し、ひどい腎障害を起こすことがわかりました。さらに、甲状腺ホルモンが働かなくなることで、マクロファージで転写因子の働きが活性化し続けてしまい、その結果、炎症性サイトカインの産生が止まらず、腎障害が進行することも明らかになりました。

 今回の研究成果は、CKDの病態において甲状腺ホルモンとその受容体による作用が重要な役割を果たすことを示すきわめて画期的なもの。CKD患者さんにはこれまで、生活習慣の改善や高血圧、糖尿病に対する治療が中心でしたが、透析療法を回避するための新しい治療法の開発が期待されます。(菊地 香織)

関連リンク

⇒元の記事を読む

このニュースに関するつぶやき

  • 腎臓病の悪化を防ぐメカニズムを解明(QLife(キューライフ)-03/27 12:01) 透析…前の段階でくい止められるならそれは大変良い事です(>_<)導入してしまったら生活が全く変わりますし死ぬ迄やらなきゃならないし…(>_<)������������ӻ�����*文章中の間違い→[人口]じゃなくて[人工]ね!
    • イイネ!2
    • コメント 2件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定