患者の多くは女性
股関節が痛んだり、動かしにくくなったりする「変形性股関節症」。最初のうちは、立ち上がったときや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じる程度ですが、進行すると、長時間立ったり歩いたりすることも辛くなり、日常生活に大きな影響を与えます。女性に多く、国内の患者数は約120万〜420万人とされています。
慢性進行性の疾患のため、進行をいかに防ぐかが重要なポイントです。すでに、骨形態の異常や加齢、性別など複数の要因が進行に関わることが明らかになっていますが、股関節に過剰な負荷をかけることも進行につながるのではないかと考えられてきました。しかし、股関節へのどのような負荷が進行を加速させるのかは解明されておらず、どのようなリハビリテーションが効果的なのかも不明でした。
京都大学大学院医学研究科の建内宏重助教、市橋則明教授らの研究グループは、歩くたびにかかる股関節への負荷と、1日の活動量（歩数）に着目。それぞれを分析するとともに、それらを掛け合わせた「股関節累積負荷」という新しい指標を考案し、同医学部附属病院整形外科で変形股関節症と診断された女性患者50人を対象に研究を実施しました。
歩き過ぎはマイナスに
股関節累積負荷を算出するため、歩き方を3次元的に分析して一歩ごとに股関節に加わる負荷を定量化し、1週間の歩数を歩数計で測って1日の活動量を計測。研究開始時と1年後にそれぞれ、股関節の隙間の幅を測定し、0.5�舒幣綟霍�がすり減っていた患者を進行群、それ以外を非進行群にわけ、進行度合いが違う要因を分析しました。その結果、一歩ごとの股関節への負荷と1日の活動量は単独では進行に大きな影響を与えませんでしたが、股関節累積負荷が増すことで進行することが明らかになりました。
これまで進行の要因とされていたのは、年齢や性別など、患者さん固有の要因で変えられないもの、もしくは骨形態の異常など手術によってしか変えられないものがほとんどでした。しかし、股関節累積負荷は、歩き方の改善や過剰な活動量を抑制することで変えることができ、進行を抑えられる可能性があります。一般的に、活動量を増やすことは体にいいとされますが、変形股関節症の患者にとっては、過剰な活動量は進行を加速させる危険因子であるといえます。
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研究成果を基に、今後、歩き方の改善や活動量のコントロールなどを手段とする進行を防ぐ研究を行うことで、有効なリハビリテーションが明らかになる可能性も期待されます。（菊地 香織）
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