citrus編集部から、とあるURLが私のもとへと届いた。
話題のネタやニュースをツイートする『togetter』というアプリから拾ってきたネタらしい。タイトルは『ファンは「新規」さんが嫌いなのではなくて、「にわか」が嫌いという話』。これをフックとし、「にわかファン」について語ってほしい……との依頼である。
なかなかにデリケイトな問題だ。
「サッカーＷ杯・WBC・オリンピック・ラグビー・テニス……と、大きいスポーツイベントが開催されたり、世界を相手に日本人選手やチームが大健闘したタイミングで、かならず『にわかファン』の話題は出てきますよね。
盛り上げる意味では『にわか』も有効に働くと思うのですが、昔からのファンにとっては面白くないんでしょう。わかるような気はします」
……とはcitrusの編集者。たしかに、W杯で日本代表が勝利したときなど、国内における“歓喜の躁状態”をもっとも即興的かつ象徴的に伝えたいなら、たとえば「渋谷スクランブル交差点での踊狂的ハイタッチ」は欠かせない。つまり、“盛り上がりの記号”として、渋谷に集う「（大半の）にわかファン」は、少なくとも“報じる側”のメディアに対して、のっぴきならない貢献を果たしているのだ。だが、一方でそういう光景を斜めから眺めながら、疎ましく感じているであろう「ガチなファン」も間違いなく実在する。たしかに、その心情も十二分に理解できる。
もう15年以上も前、世間的に「ダーツ」がちょっとだけ流行った時期、私も周囲の友人に促され“Myダーツ”まで購入し、約1ヵ月ほどダーツバーに足繁く通ったものだが、結局は点数の数え方も知らないまま、ダーツボードをキャッチャーミット代わりに、セットポジションのスリークォーターフォームで“投球”し、ダートが刺さらずぴゅんぴゅんエリア外へと跳ね返っていた。常連さんたちから見れば典型的な、さぞかし「ウザイにわか」だっただろう。もちろん、今ではそのMyダーツは、私の部屋のどっかの片隅で埃にまみれて眠っている。「昔からのダーツファン」の皆さんには本当に失礼なことをしていた……と心から反省する。
誰だって最初は「にわか」、「ご新規さん」だろ！──という「にわか批判」に向けての反論がよく聞かれる。だが、「にわか」と「新規」は似て非なるもの──という反論に向けての反論も。当スレッドにあったツイートでは、その違いをこう定義づけている。
にわかファン＝一定期間の流行りに乗って、その間だけファンを名乗る人
新規ファン＝まだファンになって間もない人
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最近の例では「カープ女子」を自称し、「にわか」と大ひんしゅくを買った加藤紗里が記憶に新しい。「カープ」が「鯉」の意味であることを知らなくてもいい、「黒田」を「キクりん」呼ばわりしてもかまわない。ただ、「私、カープ女子です」ではなく「私、カープ女子になりました」と申告すれば、さらにはカープ（セ・リーグ）優勝フィーバーが冷めやった昨今でも、たまにツイッターやらブログやらでカープについて一言でも触れれば、マッチポンプのような言動を繰り返すあんな彼女でも、鯉党は次第に温かく迎えてくれたのではなかろうか。
「にわか」でなにかを片っ端から始めて、それらのなかから“自分に合うもの”を10年に一つくらい発見し、「新規」から「本物」へと成長していくケースは、わりと誰しもに該当するスタンダードなプロセスだったりする。私の場合、「ダーツ」はたまたま自分に合わなかったが、最初は「阪神のコスプレ目的」だけで40歳から始めた「草野球」は、もはや“一生の趣味”となりつつある。
でも、本質が「にわか」な性格の人たちというのは、おそらくなにがあってもどこに行っても「新規」な趣味を積み重ねるだけで永久に「新規」のままなんだと思う。「にわか」という「パッと咲いてパッと散る」行為が大好き、一言でまとめてしまえば「にわか（の）ファン」──いや、日本語的にコレだとさすがにややこしくなるので──「にわかフェチ」なのである。
「野球をやるのが楽しい」「サッカーを観るのが楽しい」「将棋を指すのが楽しい」と同様、「にわかで騒ぐのが楽しい」も、れっきとした一ジャンル。せめて、Ｗ杯で日本代表が一勝しただけで、わざわざ埼玉だとか茨城の奥地からオール覚悟で渋谷まで出向いてくる人たちは、正式に「ガチのにわかフェチ」と認定してあげればいかがだろう？ 私の「ダーツパターン」よろしく他の通行人の迷惑になったり、酔った勢いでゴミをポイ捨てするのだけはやめてもらいたいが……？
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