キャリア約40年の教育研究者が実践 わが子のリーダーシップを育む方法

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2017年04月17日 18:04  新刊JP

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『大切なことは、みな子供たちから学んだ』の著者、七田厚さん
書店のビジネス書コーナーに行くと、これでもかというぐらい目に飛び込んでくる「リーダーシップ」と銘打った書籍の数々。実社会に出て、その重要性を痛感し、こうしたテーマの本を手に取った経験のあるビジネスパーソンは少なくないだろう。

だができることなら、大人になってからではなく幼いうちに、「リーダーシップとは何か」を、身をもって学んでおきたいところ。では、わが子にこうした経験を積ませるにはどうすればいいのか。

『大切なことは、みな子供たちから学んだ』(日販アイ・ピー・エス刊)の著者であり、しちだ・教育研究所代表の七田厚さんに、そのポイントをうかがった。

■「自立」の先にある「自律」 わが子にリーダーシップをつけさせるには

――本書ではいくつかのユニークな七田家の「伝統」が出てきます。そのひとつである「高校からは寮のある学校に入学させる」が印象的でした。お父様はどのような思いから、この伝統を大切にしていたのだと思いますか。

七田:実は、わたしも気になって、一度尋ねてみたことがあるんです。そうしたらやはり、「子どもの自立を早めたかったから」ということを言っていました。

その狙い通り、寮生活を送るようになると、何か困ったときに親を頼ることができないため、自分で問題を解決する力はついたと思いますね。

それと、わたし自身、大人になってから気づいたのは、物理的に離れることで、親も早く子ばなれできるという効果があったということです。

――実家を出たことで親御さんの子ばなれが早まったというのは、具体的にどのような場面で感じたのですか。

七田:この本には書きませんでしたが、わたしが実家を離れる前後で、母親のわたしへの態度が一変しました。大人として対等に接してくれるようになったといいますか。

実家にいたころは、「あなたは●●だから」といったような、決めつけた感じの物言いが多かったような気がしますし、どこか「所有物」のように扱われている感覚もありました。

でも、入学から夏休みで帰省するまでの数ヶ月のあいだに、「毎日、一緒にいることが当たり前」でなくなったことで、お互いに別人格として向き合えるようになった。いわば親子関係のスタートラインを引き直すような感じでした。

――ちなみに、七田さんが考える「自立」とはどのようなものでしょうか。

七田:経済的な意味での自立は社会人になってからでいいと思うので、それ以外のことでいうと、「自分のことが自分でできる」ことが重要だと思います。

ただ、これだけでは不十分で、子育てにおいては、わが子を「自律」させるための働きかけも大切だと考えます。

――自律できている子とは、どのような子どもでしょう?

七田:困っている友だちがいたら自力で助けられる子、でしょうね。この力こそ、リーダーシップにほかなりません。

――では、わが子を自律させるために、親はどのような働きかけをすべきなのでしょうか。

七田:わが子が、「してもらう子」から「してあげる子」へと変われるよう働きかけることですね。たとえば、子どもが何か親におねだりをしてきたときに、すぐ救いの手を差し伸べるのではなく、あえて子どもに「させてみる」といったように。

子ども自身の「したいこと」が、誰かに「してあげること」につながるよう導いていくことで、子どもの自律は確実に早められると考えています。

――ところで七田さん自身、「自律できたな」と思ったのは、何歳ぐらいのときですか。

七田:恥ずかしながら、30歳ぐらいのときだったと記憶しています。わたしは24歳で父のあとを継いで社長になったのですが、29歳ぐらいまでの自分の行動を振りかえると、子どもじみたものが多かったような気がしますから。

――人によっては「30歳成人説」を唱えるケースもありますが、本書にもあるように、「物理的に距離を置く」という話とは別に、子どもが大きくなってからもしばらくの間は、親が「目は離しても心は離さない」という意識を持つことは重要かもしれませんね。

七田:30歳成人説という考え方には大いに賛成します。実際、「クレジットカードの使い方」など、子どもがある程度の年齢にならないと教育できないこともあると思いますから。

わたし自身、大学生になり東京で一人暮らしを始めたばかりのころ、クレジットカードを作り、父の目が届かないのをいいことに、36回もの分割ローンを組み、10万円以上もするオーディオセットを買ったことがありました。

すると後日、わたしが一人暮らしをする部屋を訪ねてきた父が、そこに並んでいるオーディオセットを一瞥したあと、わたしの目を見据えて、こう言ったんです。「支払いの詳細がわかる書類を見せなさい」と。

その書類を見た父はさらに「あなたはまだ借金をして買い物をするほど大人じゃないよ。このローンの残りは全部お父さんが肩代わりしてあげるから、約束してほしい。もう二度とクレジットカードで買い物をしないこと。欲しいものがあったら、お金を貯めてから買うようにしなさい」と諭すように言いました。

これはまさに「目は離しても心は離さなかった」ケースだと思いますね。
いま、わたしは経営の仕事もしていますが、銀行からお金を借りる際は、かなり慎重に「いくらまで借りるか」を検討します。

大学生のときのあの経験がなければ、「お金を借りることの怖さ」を考えないまま経営者になってしまっていた可能性すらある。そう考えると、父には本当に感謝しても感謝しきれません。

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

七田:前半のインタビューの冒頭で話したことの繰り返しになりますが、本書を子育てのヒントとして活用していただけたらうれしいですね。

「こういう接し方があるのか」と参考にしていただいてもいいですし、「自分の親からは、どういうふうに育ててもらっただろう?」と当時のことを思い出すためのきっかけとして使っていただいてもいい。

本書を通して、子育てにおいて自分が大切にしたいことに気づいていただけたらと思います。
(新刊JP編集部)

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