Aβの凝集抑制作用のあるタキシフォリン
画像はリリースより
アルツハイマー病発症の原因となる老廃物が脳内に蓄積するのを抑え、認知機能障害も回復させる物質を、国立循環器病研究センターや京都大学などのチームが突き止めました。この物質は、アルツハイマー病の新しい治療薬になる可能性があり、2025年をめどに実際の診療で使えるようにしたいとしています。
アルツハイマー病の発症原因は長らく不明でしたが、最近の研究によって「アミロイドβ(Aβ)」という老廃物が脳血管に蓄積する「脳アミロイド血管症」が一因であることが判明しました。しかしながら、脳アミロイド血管症に焦点を当てた治療開発研究は十分に行われていませんでした。
研究チームは、Aβが蓄積した毒性を持つ「Aβオリゴマー」が初期の脳アミロイド血管症の主因であると仮定。そこで、Aβの凝集を抑制する作用がある「タキシフォリン」に着目し、アルツハイマー病のマウスを使った実験を行いました。タキシフォリンはフラボノイドの一種で、強力な抗酸化作用がある物質といわれています。
Aβの蓄積を抑制、認知機能障害も回復
実験の結果、タキシフォリンを投与したアルツハイマー病のマウスは、非投与群のマウスに比べて、Aβオリゴマーの量が4分の1程度にまで減少していることがわかりました。さらに、記憶の中枢組織である海馬へのAβ沈着量が非投与群の半分程度であることや、脳血流量が正常なマウスと同等にまで回復していることも明らかになりました。
また、マウスの記憶力を測定するため、プールを使った空間記憶能テストを行ったところ、投与群のマウスは正常なマウスと変わらない結果となりました。このことから、タキシフォリンを投与することで、認知機能が正常に近い状態まで回復することも判明しました。
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今回の研究により、タキシフォリンは脳内にAβが蓄積するのを抑制する効果と、認知機能障害を回復する2つの効果があることがわかり、アルツハイマー病の有力な新薬候補になる可能性があります。研究チームでは今後、人での有効性や安全性を確認するため、2017年度中の治験開始と、2025年中の臨床応用を目指したいとしています。(菊地 香織)
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