「社長の愛人」勤務実態がないのに月給20万円、税務上の「特殊関係人」をめぐる問題

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2017年05月01日 10:53  弁護士ドットコム

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「社長の愛人」と聞くと、様々な想像が膨らんでしまいますが、その「お手当」にかかる税金は、どのようになっているのでしょうか。


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ネットのQ&Aサイトには、ある会社(従業員10人程度)で、実際には働いていない愛人に対して、毎月20万円の給料を支払っていることに対して、「これって税務上問題ないのでしょうか?」と疑問の声が投稿されていた。


愛人にお手当を渡す場合、従業員ということにして給料の形で渡しても問題ないのだろうか。松本崇宏税理士に聞いた。


●税務の世界で愛人は「特殊関係人」

「ギラギラした印象を受ける社長さんですね。なかなかのやり手社長なのでしょうか。


税務の世界で愛人は『特殊関係人』と呼ばれており、税務調査でも愛人への給与や架空人件費については重点的に調査される項目です。会社側と愛人側でそれぞれどのような税金が課されるのかを見てみましょう」


●会社側の経費になるのか

勤務実態のない給与は経費になるのか。


「まず、給与はそもそも勤務実態がなければ当然に会社の経費とすることができません。会社側では、支給した20万円の全額が経費にならないため利益が増えます。つまり、支払うべき税金も増えることになります。


また、実態のない架空経費の計上は『悪質』と認定されて、重加算税というペナルティも納めることになります。さらに、架空経費を計上したことのある会社と認定されれば、税務調査も通常の会社よりも頻繁に入られてしまうことも想像に易いところです。


さらに、会社側で経費にならないとはいえ『給与』として計上していましたので源泉所得税の徴収・納付の義務はそのまま負うことになります。


勤務実態のない給与は、会社にとってひとつも得がないということがお分かりいただけたかと思います」


●愛人側の税金はどうなるのか。

それでは、愛人の側の税金はどうなるのか。給与とされた場合はどうなのか。


「会社側が給与として処理していたということは給与に対して所得税・住民税がかかります」


給与ではなく、社長個人が支払っていた場合はどうか。


「会社からの給与ではなく、社長個人のポケットマネーで生活費を援助していた場合については贈与と認定される可能性があります。贈与税は貰った側が払う税金となりますので、愛人が申告・納税の義務を負います。贈与税は日本の税制の中において最も高い税金のひとつですので、こちらについても得があるとは思えません。


今回のケースでは社長も愛人もまったく得をしていることはないと思います。また、何よりも問題なことは、愛人を会社で囲うような会社では働きたくないという気持ちを従業員に持たせてしまったことなのかも知れません」


【取材協力税理士】


松本 崇宏(まつもと・たかひろ)税理士


「デリヘルはなぜ儲かるのか」(小学館文庫)の出版を機に日本で唯一、風俗業種に特化した税理士事務所。全国の風俗業の税務申告、相談の対応をしている。


新刊「風俗オーナー限定 最強の『節税』」(幻冬舎)が平成29年6月発売予定


事務所名   : 税理士法人松本


事務所URL: http://www.deri-tax.com


(弁護士ドットコムニュース)


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