留学生向け予備校、市販本の「丸ごと複製・配布」が発覚…教育目的でもアウト?

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2017年05月10日 10:33  弁護士ドットコム

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中国人留学生向けの予備校が、授業で市販の本や問題集を丸ごと複製し、学生に配ったとして、複数の出版社が同校に対して損害賠償請求を求める方針だと、朝日新聞電子版(4月27日付け)が報じた。報道によれば、違法複製はのべ95万9000ページ、約10社の90冊、被害額は300万円以上と推計されるそうだ。


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請求されているのは、2008年に開業した、中国人向け予備校最大手の「行知(こうち)学園」(東京都新宿区)。「行知学園」の担当者は「悪意はなく、日本の著作権法を知らずにやってしまった。事実は事実として認め、損害賠償請求についても、誠意をもって対応していきたい。いま現在は、学校内でオリジナルの教材作りを始めている」と話していた。


学校の授業では、著作権者に許可なくコピーすることを認めているはずだが、予備校の位置付けはどうなっているのか。桑野雄一郎弁護士に聞いた。


●予備校は「学校」に該当しない

「市販の本や問題集は著作物に該当しますので、これを無断で複製すると『複製権』の侵害となります。また、生徒の中国人留学生に配布したということですが、特定または多数の人に対して配布しているので、『譲渡権』の侵害にもなるでしょう。


ただ、例外もあります。学校や、その他の教育機関においては、授業の過程で使用する場合には、著作物を複製し配布しても譲渡権・譲渡権の侵害にはならないとされています」 


では今回の予備校は何が問題となったのか。


「例外が認められるのは、『学校その他の教育機関』です。『学校』とは幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び大学などの学校教育法上の学校をいいます。学校に類する『その他の教育機関』からは、営利目的のものは除外されています。


つまり、営利目的の施設である予備校などは『学校その他の教育機関』ではありません。そこで今回は、複製権、譲渡権の侵害にあたる行為と考えられるのです」


ちなみに、学校で複製が認められているのであれば、どんな資料でも、丸ごと複製していいのだろうか。


「学校や、その他の教育機関においても、全てが認められるわけではありません。著作物の種類や用途、その複製の部数と態様によっては、著作権者の利益を不当に害することになり、そのような利用行為は許されないとされています。


市販されている本や問題集を一冊丸ごと複製・配布することは著作権者の利益を不当に害するというべきでしょう。ですから今回のような行為はたとえ行ったのが学校であっても許されないという結論になると思われます」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
桑野 雄一郎(くわの・ゆういちろう)弁護士
骨董通り法律事務所。島根大学法科大学院特任教授。「外国著作権法令集(46)−ロシア編―」(翻訳)、「出版・マンガビジネスの著作権」(以上CRIC)、「著作権侵害の罪の客観的構成要件」(島根大法学第54巻第1・2号)等。

事務所名:骨董通り法律事務所
事務所URL:http://www.kottolaw.com


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