脂肪酸のバランス制御で、2型糖尿病の発症を抑制

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2017年05月22日 12:02  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

脂肪酸伸長酵素「Elovl6」の着目


画像はリリースより

 遺伝的な体質に加えて、肥満や運動不足などの生活習慣の乱れが原因となる「2型糖尿病」。その発症に、脂肪酸伸長酵素「Elovl6」を介した脂肪酸バランスの変化が関与していることを、筑波大学医学医療系の研究グループが発見しました。

 国内の糖尿病患者の大半は2型糖尿病とされており、割合は1型糖尿病が約5%、2型糖尿病は約95%といわれています。2型の発症には、血糖値を調整するホルモンのインスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」と、インスリンを合成・分泌する膵臓のβ細胞の機能不全が関与すると考えられています。また、β細胞量の減少も報告されていますが、詳しい病態や発症メカニズムはよくわかっていません。

 同研究グループでは以前、過栄養(栄養素が過剰な状態)が生活習慣病を引き起こすメカニズムを、脂肪酸合成系に着目して研究。パルミチン酸からステアリン酸への伸長を触媒する酵素Elovl6が過栄養状態で活性化することや、Elovl6を欠損させたマウスでは、脂肪酸の組成が変化し、肥満や脂肪肝のままでも、インスリン抵抗性を発症しにくいことを示していました。しかし、Elovl6の阻害が2型糖尿病の発症を抑制するかどうかについては明らかにされていませんでした。

酵素が欠損するとインスリン分泌が増加

 今回の研究では、通常のマウス、肥満・2型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)、Elovl6を欠損させたdb/dbマウスの血糖値、糖尿病の指標であるヘモグロビンA1c、血中インスリン値を比較。その結果、Elovl6欠損db/dbマウスでは、膵β細胞の増殖とアポトーシス(細胞死のひとつ)の減少によって膵β細胞量が大幅に増加し、インスリン分泌量が増大するために、血糖値が低下することがわかりました。

 また、Elovl6欠損db/dbマウスの膵臓ランゲルハンス島では、オレイン酸とトリグリセリド(中性脂肪)の蓄積が減少し、膵β細胞の減少を引き起こすとされる炎症と小胞体ストレスが抑制されることを確認。さらに、膵臓ランゲルハンス島に脂肪酸をふりかけた解析から、オレイン酸が膵β細胞のインスリン含量やグルコースに応答したインスリン分泌能を減少させること、Elovl6が欠損すると、パルミチン酸による膵β細胞の炎症、小胞体ストレス、アポトーシスが抑制されることも明らかになりました。

 今回の研究により、Elovl6を欠損させると、インスリンを産生する膵臓のβ細胞の量とインスリン分泌が増加し、糖尿病の発症・進展が抑制されることを突き止めました。研究グループは、「脂肪酸バランスの適切な制御やElovl6の活性を防ぐことが、糖尿病の新たな予防・治療標的として有用である」としています。(菊地 香織)

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  • 遺伝的な体質に加えて、肥満や運動不足などの生活習慣の乱れが原因となる「2型糖尿病」。 ← 薬の副作用ってのも記載しろよ(´・ω・`) 難病治療でステロイドの長期・大量使用で血糖あがった俺。
    • イイネ!7
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