不安?それとも明るい? 人工知能時代に働き方はどう変わるのか

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2017年05月23日 11:33  新刊JP

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『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』(かんき出版刊)
今年に入ってからは特に、人工知能(AI)に関するニュースをほぼ毎日どこかで見かけるようになった。それは、書店においても同じだ。新刊書や話題の本には「人工知能」という言葉がタイトルに入った本が並び、時にはそれがランキングの上位に来ることもある。

私たち一般人がAIについて知りたいと思った時に、大まかに2つの感情があるのではないか。

一つは「希望」。AIによってもたらされる便利で豊かな未来である。そして、もう一つが「不安」だ。自分の仕事がAIによって奪われてしまうのではないか、技術的特異点(シンギュラリティ)を超えて、AIが人間を支配するのではないかという不安は多くの人にあるはずだ。

将来、自分はどのように働いているのだろうか。

この疑問に対する明確な答えはないにせよ、ある程度想像することはできる。『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』(藤野貴教著、かんき出版刊)は、2020年以降のAI社会において、私たちがいかにして働くのかという、そのヒントをもたらす一冊だ。

■AIは「人間の仕事を奪う」とともに「人間らしさを回復する」

「AIは人間の仕事を奪う」という言い方はかなりネガティブな解釈と言える。確かにそういう側面もあるが、「人の仕事を楽にする」というポジティブな側面もある。人間がやらなくてもいいことが増え、その分、自由な時間が増えたり、より創造的な仕事ができるということを意味する。

AIにも得意な領域と苦手な領域がある。得意としている領域が「論理的に分析し、大量の情報から統計的に考え、高速回転で何度も何度も実施する」ということ。つまり、単純作業であったり、あまり考えなくてもできる仕事だ。

一方、AIが苦手な領域は、「創造的に考えることがより必要な領域」「身体性や感情が求められる領域」である。これはクリエイティブであったり、サービスであったり、コミュニケーションが必要とされる仕事が当てはまる。

これは何を意味しているのか? 著者は重要な指摘をする。

実は20世紀とは、「人間をロボット的にする時代」であったともいえます。(中略)「効率」が最も重要な業績評価指標(KPI)となり、そのために人の感情や疑問は、時に「非効率」なものとして無視されざるを得ない状況に陥りました。まさに人がロボット的に進化してきたのが、20世紀であったといえます。(P59より引用)

つまり、AIは私たちが人間らしさを回復するための手助けをしてくれるものであるということが言えるのだ。その切り口から考えれば、必ずしも「仕事を奪う」というネガティブな感覚が正しいとは言い切れなくなる。

■AIに取って代わられる人、そうではない人の違い



本書における特徴的な部分の一つが、人間の仕事の中での役割をマトリクスで分類し、どの部分がAIに取って代わられるかを説明していることだろう。

これは「何の仕事がなくなるか」というだけでなく、それぞれのパーソナリティに根差した部分も出てくるだろう。
例えば前述した、AIの得意分野「論理的に分析し、大量の情報から統計的に考え、高速回転で何度も何度も実施する」には、「オペーレーター」という言葉が当てはめられている。データを収集したり、分析をする。そこに感情は入らないので人間でなくてもできるということになる。

では、人間が担う必要があるのはどんな仕事か。

まずは、非構造的なモヤモヤを言葉にする「コミュニケーター」は、原理原則を問いなおし、仮説を立てられる人を指す。言い換えれば好奇心旺盛な人だ。

続いて、仕組み化された領域の中で感性や身体を活用して相手に働きかける「モデレーター」も、AIに取って代わられづらい。他者の感情を察し、ホスピタリティをもって応対するのは人間が持つ武器であるのだ。

そして最後に既成概念にとらわれずに、今までにない新しい価値を生み出す「イノベーター」は、まさに人間が担うべき部分である。こうした人は現状の組織や社会からあまり評価されないところもあるものの、最もAIに代替されにくい存在とも言えるのだ。

この3つの領域のどこかに自分の得意分野を当てはめてみると、20年後、そして30年後も活躍できる人材になるにはどの道に進めばいいかが見えてくるはずだ。

「まだAIの影は見えない、自分の仕事は大丈夫」と思っているならば、それは危ない考え方かもしれない。変化は往々にして気付かない間に起き、後から気付くものであったりする。技術に関するニュースやプロダクトのリリースについて目を見張り、時代が動く様をその目で捉えることが大事だ。
もう、働き方の変化はすでにはじまっているのだから。

(新刊JP編集部/金井元貴)

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