脳梗塞の発生部位に新たな血管を導く“スポンジ”を開発

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2017年05月25日 12:02  QLife(キューライフ)

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QLife(キューライフ)

化学と生物学の手法を組み合わせて作製


画像はリリースより

 脳梗塞は、脳の血管が詰まることで血液の供給が遮断され、神経細胞の「ニューロン」が壊れる疾患です。ニューロンは神経回路を形成して機能を発揮しますが、例えば、手足の運動を制御する神経回路を構成するニューロンが壊れると、その回路が破綻し、手足に運動障害が起こります。このようにして失われた脳の機能は、自然治癒ではほとんど回復しません。

 しかし、近年の研究で、脳には潜在的な再生能力が秘められていることが明らかになってきました。脳梗塞において、この再生能力を活かすためには、ニューロンの“死”を最小限に抑えて、損傷した脳を修復し、新たな血管を誘引する必要があります。しかし、現時点では、脳梗塞が起こった部位に新たな血管を誘引する方法はなく、可能にする技術開発が待ち望まれています。

 このほど、東京医科歯科大学と名古屋市立大学の共同研究グループでは、化学と生物学の分子合成技術を用いて、血管を誘引する機能があるタンパク質を結合させ、スポンジ形状の人工細胞足場の開発に成功。さらに、マウス実験で、脳梗塞が起こった部位に新しい血管が導かれることを明らかにしました。

損傷した脳の“再生”への第一歩

 研究グループは、細胞接着活性を持つタンパク質「ラミニン」を利用して、血管を導く際の“土台”となるスポンジ形状の人工細胞足場を作製。これに、血管を誘引する機能を持つ「血管内皮細胞増殖因子(VEGF)」を結合させて、「VEGF結合ラミニンスポンジ」を開発しました。

 実験では、このスポンジを脳梗塞マウスの脳内に移植。脳梗塞処理3日後に移植した結果、7日後に新たな血管が誘引されたことを確認しました。一方、VEGFを結合していないラミニンスポンジを移植した場合、新しい血管はほとんど検出されず、VEGFが結合したスポンジのみ顕著な成果が認められました。

 現在、脳梗塞の治療には薬物療法などがありますが、発症から数時間以内に投与しなければ効果がないという問題点が残っています。今回の研究で用いられた手法により、損傷した脳を修復して再生させる、再生医療への展開が期待されます。研究グループは、「開頭手術を必要としない、患者さんへの負担が少ない人工細胞足場の開発を目指す」としています。(菊地 香織)

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