【ライターコラムfrom名古屋】10年ぶりの三ッ沢。時代の流れを感じる楢崎正剛の“リマインド”

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2017年05月26日 12:11  サッカーキング

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第16節の横浜FC戦は楢崎にとって10年ぶりの三ツ沢での試合となる [写真]=今井雄一朗
横浜FCとの上位直接対決を目前に控え、鋭意をもって調整に励む名古屋グランパスの面々の中で、この対戦相手と会場に一家言を持つ選手が2人いる。一人はもちろん、これが昨季までの古巣対戦となる渋谷飛翔だが、現在の彼は第2GKの立ち位置からスタメン獲得を目論む存在。帯同メンバーには間違いなく入るだろうが、ピッチで古巣にその雄姿を見せることはなかなか叶いそうにない。

 そしてもう一人は渋谷がその牙城を崩さんと狙う、レジェンドGK楢崎正剛である。言わずと知れた前所属・横浜フリューゲルスの最後の一人であり、三ッ沢を本拠地としてきた男だ。今回は実に10年ぶりとなる三ッ沢での試合となるわけだが、本人は「もうそんなこと、どうでもいいでしょう」と最初は素っ気なかった。しかし、アウェイ大分トリニータ戦でのとある出来事を思い出した楢崎は、今も変わらぬフリューゲルスへの思いを吐露し始めたのである。

「竹内(彬)に聞いたんですけどね、フリューゲルスのことを知らない大分の若手の選手がいるらしいんですよ。メンバー表でオレの前所属が書いてあるでしょ? そこに書いてあるチームを知らない選手がいたと。そういう選手がいてもおかしくはないなと思うところもある反面、日本サッカー界としてプロでやっている選手がそういうことを知らないというのはちょっと寂しいなって思いますね。そういう“黒歴史”があったんだってことは、サッカーファミリーとして共有してほしい。サッカー自体は変わっていくし、新しい選手も多く出てきて、日本のサッカーがレベルアップしたり、初期からあるチームじゃないチームが躍進していくというのも大事。ただ、そういうことがあったということを聞いて、ウチのチームでは僕がいるから知ってくれていると思うけど、他のチームだとそういう選手がいるんだなということは思いました。まあ、これは次の試合にはまったく関係ない話ですけどね(笑)」




 まったくどころか関係しまくる内容に、「関係ない話」とオチをつけるあたりは彼一流の照れ隠しだ。ストレートに自分を表現するよりは、何か人とは違うことをしたがる、少々ひねくれ者の楢崎である。「そういうのを教えるのも竹内の仕事やぞ、と言っておきました」とかわいい後輩を“語り部”に任命するあたりもそうだ。大分の若手も良いネタを提供してくれたものである。これで楢崎は、悲劇から20年目のリマインドを、彼らしくすることができたのだから。

 そして目の前の試合に意識を移せば、彼の目はしっかりと相手の戦力に向けられている。風間八宏監督以下、まずは「自分たちのサッカーをすること」が合言葉のチームだけに、相手チームのスカウティングはほとんど行われないという。ゆえに敵を知りたければ自分で見るしかなく、楢崎も自らの目で試合をチェックしているようだ。警戒心を高めるのは、ポジション柄としてもやはり、エースのイバである。

「このリーグの中では(田中マルクス)闘莉王もそんな感じでしたけど、点の取れる特別な選手ですね。まあ、警戒心を高めるところはあります。J2ではどんな試合でも、今まで知らなかったけどなかなかやるなって思った選手もいるし、だからどのチームも危険な選手はいる。でも、特に上位を争っているチームのキープレイヤーだという、そういう選手は気をつけなきゃいけない」

 思い出の地で、思い出のクラブの生まれ変わりと、41歳の“生き字引”としてまた対戦する。そんな選手は後にも先にも、もう楢崎正剛しかいないだろう。未だ進化を続ける大守護神は、錯綜する思いを胸に秘め、名古屋を勝利に導くパフォーマンスを志す。

文=今井雄一朗

このニュースに関するつぶやき

  • 消滅した横浜フリューゲルスを知らないJリーガーが出てきたのは時代の流れを思い知らされる。解散決定後の天皇杯優勝が懐かしいな。
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