米国防長官にアドバイザーを送り込む、謎のシリコンバレー企業

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2017年06月13日 15:23  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<トランプ政権のマティス国防長官周辺に、あるシリコンバレー企業が3人のアドバイザーを送り込んでいる。各国の情報機関や捜査機関をクライアントに持つ、謎の企業の正体とは?>


政治ニュース専門メディアのポリティコは今週、ジェームズ・マティス米国防長官にからむ興味深い記事を掲載している。


この記事は独自調査によって、ある企業と深い繋がりがある少なくとも3人が、マティス国防長官の側近として米国防総省の中枢に食い込んでいることが判明したと報じている。同じ企業関係者が、次席補佐官などに3人も起用されるのは、過去をさかのぼっても非常にめずらしいケースだという。


なぜ一企業にそんなことが可能なのかと不思議に思われるが、それは国防総省や米政府に対してかなりの影響力を持っているからだ。


その企業とは、シリコンバレーに拠点を置くパランティア(Palantir)。日本ではまだその名前を知る人は少ないかもしれない。


【参考記事】サイバー攻撃で他国を先制攻撃したいドイツの本音


実はこの企業は何年も前から、アメリカの安全保障の関係者の間ではよく知られていた。パランティアは世界的にも「最も謎めいた企業」の一つと言われているが、一体どんなビジネスをしているのか。


端的に言うと、パランティアは情報分析ツールを提供するIT企業だ。同社のソフトウェアは、データマイニングを行うツールで、諜報活動で得た情報をはじめ、SNSや電子メール、クレジットカード履歴や航空チケットの購入記録、監視カメラの映像などの情報を収集・分析し、短時間でビジュアルマップやヒストグラム、チャートを作り上げる。


情報・捜査機関は、テロやスパイ、犯罪対策として莫大な証拠やデータを集めて、日々分析を行う。ただどれほど情報収集の能力が優れていても、収集したデータや情報は単なる断片にすぎない。デジタル化が進む現代、世の中にある情報量は膨大なため、情報をまとめて分析し、点と線を結ぶのは大変な作業となる。一方、効率的に分析できれば、テロや犯罪の捜査や、ターゲットの監視などの能力が飛躍的に高まる。そこにパランティアのソフトウェアが導入されているのだ。


パランティアのクライアントには、そうそうたる名前が並ぶ。CIA(米中央情報局)、FBI(米連邦捜査局)、NSA(米国家安全保障局)、さらには米軍関連機関など。ペトレイアス元CIA長官は過去に、パランティアは効果的な「ねずみ取り」だと発言したことがある。さらに最近では、フランスのテロ対策を担う情報機関にサービスを提供したり、カナダにも進出したりして話題になっている。


パランティアによれば、同社の昨年のビジネスは20億ドル規模で、このうち米政府機関との契約は12億ドルに上る。


さらに興味深いのが、その創業者だ。パランティアは2004年にCIAのベンチャー支援を受けて5人で立ち上げられた企業だが、そのうちの1人が「あの」ピーター・ティールだ。ティールといえば、ペイパルの共同創業者であり、フェイスブックやリンクトインなど大手SNSに初期から投資をしてきたことでも知られるシリコンバレーの大物投資家だ。日本でもベストセラーになった『ゼロ・トゥ・ワン』の著書としても知られている。


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現在もフェイスブックの取締役であるティールの総資産は27億ドルとも言われる。また自分の悪口や性的趣向を暴露したゴシップ系の米ウェブメディアを相手に、多額の訴訟費を投じて裁判を行い、最終的に破産させたこともある。


そんなティールは、選挙戦から共和党のドナルド・トランプ候補に125万ドルを寄付するなど支援を行い、トランプが大統領になった現在もIT関連のアドバイザーを務めている。そしてトランプとIT企業関係者を繋げたりしながら、トランプからの信頼を得ている。トランプが大統領選に勝利した後、シリコンバレーのIT企業幹部が揃ってトランプと会談したが、それを取り持ったのがティールだった。


そんな背景もあって、ティールの会社であるプランティアから国防総省に関係者が入り込でいるようだ。


ただティールがアドバイザーの役割を越えて自分の企業の関係者を軍トップ周辺に送り込んでいる事実は、今後、トランプ政権の不適切な人事として問題になる可能性がある。



山田敏弘(ジャーナリスト)


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