乳がん、手術前の化学療法と手術後のカペシタビン投与で予後が改善

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2017年06月23日 12:02  QLife(キューライフ)

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HER2陰性乳がん910例を解析


 乳がんの手術前に化学療法を行い、手術後に抗がん剤の一種である「カペシタビン」を投与することで、治療後の生存期間が延びることを、京都大学の研究グループが確認しました。

 乳がんの再発を防ぐためのお薬は、抗がん剤、ホルモン剤、抗HER2薬の3種類があり、がんのタイプや再発リスクによって使い分けられています。乳がんの手術前に化学療法をおこなっても、組織に広がるがんが残ってしまう場合は、治療後の経過が思わしくないのが現状です。

 同大大学院医学研究科の戸井雅和教授らのグループでは、2007年から2012年にかけて、日本と韓国の医療機関で登録されたHER2陰性乳がん患者さん910例(日本606例、韓国304例)を対象に解析を実施。手術後に行う標準的な化学療法にカペシタビンを追加する群(カペシタビン群)としない群(対照群)に分けて、治療後の無病生存期間や全生存期間の比較を行いました。

トリプルネガティブ乳がんの患者さんでも予後改善

 比較の結果、カペシタビン群の無病生存期間は、対照群よりも長いことがわかりました。治療5年後で、カペシタビン群の74.1%に再発や他の病気が見られなかったのに対し、対照群は67.6%にとどまりました。また、全生存期間もカペシタビン群の方が長く、カペシタビン群89.2%、対照群83.6%となりました。

 さらに、2つのホルモン受容体、HER2タンパクのいずれも持っていない「トリプルネガティブ乳がん」の患者さんを対象に、同様の解析を行ったところ、無病生存率は、カペシタビン群69.8%、対照群56.1%となりました。全生存期間もカペシタビン群78.8%、対照群70.3%と、予後の改善が認められました。

 症例の約7割に副作用の手足症候群は現れましたが、手術前の化学療法後もがん病巣が残っているHER2陰性乳がん患者さんでも、術後にカペシタビンを投与することで予後が改善されるという成果が得られました。研究グループでは、「HER2陰性乳がん患者さんの予後の改善に寄与するとともに、今後の乳がん治療の進展に貢献することが期待されます」としています。(菊地 香織)

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