<サウジアラビアはよくテロ支援で非難されるが、当のサウジアラビアもテロ攻撃の犠牲と無縁ではない>
サウジアラビア治安当局は23日、イスラム教最大の聖地メッカにある大モスクで計画された自爆テロを、未然に阻止したと発表した。建物に立てこもった容疑者の男は治安部隊に包囲され、自爆したという。
サウジアラビアは、テロを支援しているとして批判を浴びてきた。2001年9月11日に起きた米同時多発テロのハイジャック犯19人のうち15人はサウジ国籍だった。サウジアラビアが国教とする超保守的なイスラム教ワッハーブ派と、テロ組織ISIS(自称イスラム国)のイデオロギーが似ているという指摘もある。
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当のサウジアラビアもテロ攻撃の犠牲と無縁ではない。王家のサウド家は欧米諸国と共謀していると、イスラム過激派から繰り返し非難されてきた。
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サウジ国内で起きた初の大規模なテロ攻撃は、1979年のメッカ大モスク占拠事件だ。聖地メッカを訪れる年に1度の大巡礼ハッジが行われていた最中に、欧米化に反対した武装勢力が大モスクを一時占拠した。2週間続いた占拠で数百人の犠牲者を出し、最後はパキスタンとフランスの特殊部隊が制圧した。実行犯たちは公開処刑された。
サウド家を敵視するアルカイダ
湾岸戦争中、国際テロ組織アルカイダの創設者ウサマ・ビン・ラデンはイスラム教徒に対して、サウジアラビアで米軍駐留を認めたサウド家を打倒せよと呼び掛け、1994年にサウジ国籍を剥奪された。
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それ以降、イスラム教過激派の武装勢力がテロの標的にしたのは、欧米人やサウジアラビアの治安部隊、宗教的少数派だ。
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1996年にはサウジ東部ダーランの米軍基地で爆弾テロがあり、19人が死亡、300人以上が負傷した。
2001年に首都リヤドで起きた連続爆発では、イギリス人とアメリカ人が犠牲になった。事件後に逮捕されたイギリス人労働者のロン・ジョーンズは、サウジの治安当局に拷問され、自白を強要されたと主張。ジョーンズは後に自白の撤回を許され、保釈された。
外国人を狙ったテロはその後も続いた。2003年にリヤドの外国人居住区で起きた自爆テロで35人が死亡し、数百人が負傷した。その数週間後には、サウジアラビアの海軍基地があるジュベイルで、アメリカ人が射殺された。事件を受けて、欧米出身の外国人労働者は一斉に国外退去した。
同年11月にリヤド西部の外国人居住区で起きた自爆テロは、犠牲者の大半が地元住人で、17人が死亡した。
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一連の爆弾テロは、米軍の駐留に反対するアルカイダのメンバーの仕業とされた。同年4月、米政府はサウジ駐留米軍の規模を大幅に縮小するとすでに発表していた。
翌年テロ攻撃はエスカレートし、死者が相次いだ。リヤドにあるサウジの治安当局の本部ビルや、西部ヤンブーの石油化学工場、東部コバールの石油関連企業が入る外国人居住区、西部ジッダにある米総領事館などが、アルカイダの攻撃対象になった。
2004年にリヤドで起きた銃撃事件では、アメリカ人2人と英BBCのカメラマンが殺害された。アルカイダはアメリカ人工学者のポール・マーシャル・ジョンソン・ジュニアを誘拐し、斬首した遺体の写真を公開した。
サウジの治安当局が地元出身のアルカイダ幹部アブドル・アジズ・マクリンを殺害してから、テロ攻撃は一時的に下火になった。サウジ政府はアルカイダのメンバーに対して、1カ月以内に投降すれば恩赦を実施すると発表した。
2007年は、テロを計画した数百人の容疑者が逮捕された。その中には、飛行機を使ったテロ攻撃を実行するパイロットとして訓練を受けた者もいた。2009年にアルカイダによるテロ犯罪に関する裁判がサウジアラビアで初めて行われ、330人が被告人になった。そのうち死刑判決を受けたのはたった1人で、サウジ当局は最終的に何人が有罪になったのかを明らかにしなかった。
ISISの参加者は2500人
同年に内部告発サイト「ウィキリークス」によって米政府の外交公電が流出し、アメリカがサウジアラビアのことを、世界中のイスラム教スンニ派過激派組織の最も重要な資金供給源とみなしていたことが明らかになった。
その後、ISISの台頭でサウジアラビアにテロの脅威が再来する。約2500人のサウジ国民がISISに参加しており、外国人戦闘員の出身国で2番目に多い。
サウジ政府は2014年にISISをテロ組織に指定し、国際的なISIS掃討作戦に加わった。
ISISはサウジアラビアで相次いでテロ攻撃を実行した。2015年5月にサウジ東部の州にあるイスラム教シーア派のモスクで自爆テロがあり、25人が死亡した。2016年にも西部メディナなど3都市で連続自爆テロが発生した。
先月トランプは外遊先のサウジアラビアで、有力な中東諸国がイスラム過激派との戦いを強めるよう呼び掛けた。既に多大な犠牲は支払っている。火に油を注ぐことにならないか。
(翻訳:河原里香)
トム・ポーター
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