田村淳さんツイッター「無断転載禁止」書いたのにニュースに使われた…法的な見方は?

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2017年06月27日 10:43  弁護士ドットコム

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お笑いコンビ「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんが、ツイッターのプロフィール欄に「無断転載」などの禁止を明記しているのに、ツイートをニュース記事に使われたとして、疑問を投げかけている。のちに記事を書いた媒体の社員が謝罪に訪れたそうだ。


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近年、SNS上での有名人の投稿がニュースになったり、一般人の投稿がウェブサイトにまとめられたりすることが多くなった。一方で、プロフィールに「無断転載禁止」などと記載し、拒否する人たちも少なくない。


プロフィール欄に記された「無断転載禁止」の意思表示に、法的効力はあるのだろうか。最所義一弁護士に聞いた。


●「無断転載禁止」に法的効力はない…著作物とは認められないツイートも

「『無断転載禁止』と記載したからといって、それ自体から、直ちに何らかの法的効力が生じるというものではありません。記載の有無にかかわらず、権利侵害があれば違法ですし、侵害がなければ適法ということになります」と最所弁護士。


一方で、「SNSへ投稿した人が、自らの投稿を勝手に使われたくないという気持ちも分かります。その意味では、法律の問題というよりは、むしろ、マナーや信頼関係の問題ではないかと思います」とも分析する。


一体、どうしてこのような結論になるのだろうか。


「そもそも、SNSや掲示板などへの投稿に法律上保護される著作権があるかというと、必ずしもそうとは限りません。著作権法上の保護の対象となる著作物は法律上、次のように定義されています。


『思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう』(著作権法第2条1項1号)


SNSやネットの掲示板への投稿も、思想や感情を創作的に表現したものと認められる場合には、ここにいう著作物に該当すると言えるでしょう。しかし、創作性が認められない、ありふれた表現であると判断され、『著作物』に該当しないとされるケースも、実際には多いと思われます」


著作物かどうかの判断では、創作性が重要になる。投稿内容によっては、そもそも保護の対象となる著作権が認められない(著作物として認められない)ものもあるということだ。


●引用や報道の要件を満たせば、「法律上」問題になる可能性は低い

また、仮に著作物であったとしても、適正な方法で利用すれば、法律上は問題にならないという。


「引用や報道など、要件を満たせば、著作権法でも、自由な利用が認められます。発言を引用して批判したりするなどの形で、自己の意見を表明したりするような場合には認められるでしょう。


ニュースで使う場合も、『時事の事件の報道のための利用』が著作権法41条で認められていますので、例えば、実際になされたツイートの画面をニュース番組で使用するようなケースでは、認められるでしょう。有名人がいかなる発言を行ったのかという事実を指摘したり、批判したりすることは、表現の自由の一環としても、保障される必要があります」


ユーザーが転載を拒否していても、サービス自体が利用を認めている場合もある。


「著作者とは、『著作物を創作する者をいう』(著作権法第2条1項2号)と定義されていますので、著作物を創作した人が著作権を有することになります。


ただし、掲示板の規約などには、投稿者が投稿した時点で、サービス事業者に使用を許諾する旨の規定や、著作者人格権(著作者が有する固有の権利)を行使しない旨の規定がおかれているのが通常だと思います。


ツイッターの規約では、コンテンツの所有権がユーザーにあることを前提に、ツイッター社に対して、非独占的かつ無償使用することを許諾する内容が記載されています。ツイッター社が提供するサービス上において、通常想定される利用については、ツイッターを利用する以上、許諾したとみなされるでしょう。なので、少なくとも適切な利用がなされるのであれば、ツイッター上に投稿された内容について、第三者が正当な批評を加えること自体は、法的に問題があるとは言えません」


●正確な報道のためには「ツイート以外の取材」が不可欠な場合も…

では、ユーザーがツイートなどの利用を拒否するのは不当なことなのだろうか。


「ツイートを記事に利用するにしても、発言の趣旨を正確に理解した上で使って欲しいと思うのは当然のことだと思います。特に、ツイッターのような短文の場合、発言だけが一人歩きしてしまうと、当初の趣旨とはまったく異なった印象が作られてしまう可能性もあります。


その意味で、なぜ、そのようなツイートをしたのか、その点も含めて報道して欲しいと考えることは、特に影響力のある有名人であれば当然のことだと思います。もちろん、すべてで許可を取れというのは行き過ぎだと思いますが、正確な報道をするためにも、本人の真意を確認するための『取材』を行うのは、ある種の『マナー』ではないかとは思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
最所 義一(さいしょ・よしかず)弁護士
東京大学農学部農業工学科(現生物・環境工学専修)を卒業後、IT技術者や病院事務職(事務長)を経て、弁護士に。一般企業法務や知的財産問題のほか、インターネット関連のトラブルの解決に精力的に取り組んでいる。
事務所名:弁護士法人港国際法律事務所湘南平塚事務所
事務所URL:http://minatokokusai.jp/office/hiratsuka/


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