ベネズエラ最高裁をヘリで攻撃したのは、警官兼アクションスターだった

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2017年06月29日 20:12  ニューズウィーク日本版

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ニューズウィーク日本版

<警察のヘリを奪って最高裁を襲撃。テロか?と思ったら、イケメン警官の大胆な反政府行動だった>


ベネズエラの首都カラカスでおととい、ヘリコプターで最高裁判所を上空から攻撃したのは、ベネズエラ警察の警官による反政府行動だった。事件直前にはニコラス・マドゥロ大統領が、政権維持のためには武力行使も厭わないと反政府勢力を脅していた。


ベネズエラ政府の発表によれば、実行犯はオスカル・アルベルト・ぺレスで、最高裁に「手投げ弾を少なくとも4発」を落とした。ヘリコプターは警察から盗んだものだ。


ベネズエラ在住の記者が撮影した動画やソーシャルメディアで広まった画像を見ると、上空のヘリコプターからスペイン語で「350 Libertad」(350自由)と書かれた垂れ幕が下がっている。民主主義や人権を侵す政権に対しては不服従を認めたベネズエラ憲法の第350項のことだ。


ULTIMA HORA | Aterriza en La Trinidad helicoptero del CICPC que sobrevolo organismos del Gobierno de Maduro. #27JunNoticia en desarrollo. pic.twitter.com/subPi6xi2p— Alberto Rodriguez (@AlbertoRT51) 2017年6月28日


A police pilot, identified as Oscar Perez, called for a rebellion against the Maduro's "tyranny" in Venezuela. pic.twitter.com/JnSQv4jz8z— Yusnaby Perez (@Yusnaby) 2017年6月28日


襲撃の夜、ベネズエラ政府は動画投稿サイト「ユーチューブ」に声明を発表。ペレスの行動はマドゥロ政権の転覆を狙った「テロ攻撃」であると断言。ペレスと米情報機関との関連を捜査中だと述べた。


フォロワーが20万人超


一方野党の指導者は、事件は反政府デモを弾圧するマドゥロへの批判をかわすための、政府派の自作自演だと一蹴した。


ペレスはインスタグラムの動画で犯行声明を出した。ペレスは軍服姿で、戦闘服と覆面姿の4人に囲まれている。


「我々は祖国に代わって呼びかける。この犯罪的で短命の政府に対抗する軍人や警官、文民職員の連合だ」とペレスは言った。「我々は国家主義者で愛国主義者で制度主義者だ」


「本日、我々が空からの作戦を行った目的はただ一つ。主権者たる国民に権力を取り戻し、憲法に基づく秩序を回復するためだ」とペレスは言い、マドゥロの退陣と総選挙の実施を求めた。


ぺレスは2012年6月からインスタグラムを始めており、フォロワーは20万人を超える。ベネズエラのことを「私の国、私の情熱」と呼ぶペレスは、ベネズエラの科学刑事犯罪捜査機関(CICPC)における特殊行動部隊(BAE)の警察部隊に所属していた。


ところがペレスには俳優という副業もありで、2015年11月に公開された『Muerte Suspendida(Suspended Death、延命)』というベネズエラのアクション映画に出演している。ペレスはインスタグラムに映画撮影時の写真を投稿し、ベネズエラのジェームズ・ボンドと呼ばれている。


ヘリコプターを盗む前、ペレスはインスタグラムに1枚の画像を投稿した。描かれていたのは歴史上の様々な時代の兵士たちの前に、イエス・キリストが現れる場面だ。まるで、戦争から国を救うのが自分の使命だと言っているようだ。


最近の別の投稿では、ベネズエラが直面する社会や政治、経済の危機を憂い、互いに気を配っていこう、特に高齢者や病人や若者を気に掛けようと言って人々を励ましている。


ペレスの消息は不明だ。


マドゥロ「武力でつぶす」


ベネズエラの国民は3カ月前からマドゥロ支配に抗議するデモを続けており、総選挙の実施と全ての政治犯の釈放を要求している。デモ参加者と治安部隊の間で起きた激しい衝突により、少なくとも75人が死亡し、そのほとんどが未成年者だった。治安部隊はデモ参加者に向けて発砲したことで批判されている。


【参考記事】「国家崩壊」寸前、ベネズエラ国民を苦しめる社会主義の失敗


【参考記事】経済危機のベネズエラで大規模な反政府デモ、17歳死亡


マドゥロは27日、自分の支持者や閣僚たちに向けて、1998年に就任したウゴ・チャベス前大統領が主導し、有産階級に対する貧困層の闘争である「ボリバル革命」を死守するため、自分は戦うと言った。


「我々は戦っていく。選挙でできないことを、武力でやる。我々は武力で母国を解放する」とマドゥロは言った。


(翻訳:河原里香)


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