<イラクのモスルに続いてISISが「首都」と称するシリアのラッカに包囲網が迫っている。支配地域の60%以上、収入の80%を失ったISISは、今後1年のうちに消滅する>
ISIS(自称イスラム国)はおそらく今後1年のうちに終焉を迎えるだろう。支配地域を失うからだけでなく、収入源も失うからだ。
ロンドンに拠点を置く軍事コンサル「IHSマークイット」によると、ISISはイラクとシリアの国境をまたいで支配していた地域をすでに60%以上失ったが、収入はこの2年で80%を失った。
2015年1月の時点では、約9万平方キロの地域を支配していたが、2年半後の現在は3万6200平方キロまで支配地域を縮小した(ただ現状でもその範囲はニュージャージー州の約2倍に相当する)。
【参考記事】シリア東部はアサドとイランのものにすればいいーー米中央軍
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「ISISは、急速な膨張から徐々に衰退に向かっていると表現できる」と、IHSマークイットの中東担当上級アナリスト、コラム・ストラックは話している。「建国宣言から3年が経過した今、彼らの統治プロジェクトが破綻したことは明白だ」
5月9日時点のISIS支配地域(図中の濃いグレーがISISと傘下組織の支配下にある) NEWSWEEK
同様にその収入も、2015年4〜6月期の8100万ドルから2017年4〜6月期には1600万ドルへと激減した。
アメリカ主導の有志連合の空爆やイラク、シリアの地上軍の攻撃で、石油生産や密輸、徴税、誘拐による身代金や収奪といったISISの収入源となっていた活動はほとんど消失した。
今回の分析が公表されたのと同じ日、イラク北部モスルを包囲していたイラク軍部隊が、14年7月にISISの最高指導者アブバクル・バグダディが建国を宣言したヌーリ・モスクを制圧した(モスク自体はISISが先週爆破した)。
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モスルはイラク国内で唯一ISISが支配する都市で、間もなくイラク国軍が奪還すると見られている。
6月29日時点のISISの支配地域(図中の濃いグレーがISISと傘下組織の支配下にある) NEWSWEEK
この8カ月間、モスル奪還作戦を指揮してきたイラクのハイダル・アバディ首相は、今週29日にISISが終焉を迎えたと声明で述べた。「ヌーリ・モスクと(付属する)アル・ハドバの尖塔を奪回したことは、偽りの国の終焉を意味する」
同時にシリアでは、ISISが「首都」と称する東部の都市ラッカで、シリア民主軍(SDF)と呼ばれるクルド・アラブ連合部隊が掃討作戦を続けている。シリアに広範な情報源を持つ英人権監視団体「シリア人権監視団(SOHR)」は、本誌取材に対してラッカが「完全に包囲された」と語った。
電話取材に応じたSOHRのラミ・アブデルラーマンは、「(SDFが)全方向からISISを包囲している。もう逃げ場はない」と話している。
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【参考記事】米国はシリアでイスラーム国に代わる新たな「厄介者」に
SDFは、ISISの戦闘員が避難するために使っていたラッカ南方の2つの村を占拠し、これによってラッカは完全に包囲された。
ラッカ攻略は今月6日に始まり、その後の3週間でSDFはラッカ近郊の4分の1を占拠した。
この7月で4年目を迎えるISISに未来はない。前述のストラックによれば、イラクとシリアに点在する支配地域も、ISISが拠点都市を失えばいずれ制圧される。
「ISISの残りの支配地域も今後1年以内に解放されるだろう」とストラックは見ている。「分断された一部の都市でISISの統治が続いても、2018年には消滅する」
ジャック・ムーア
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