近ごろ、「近視矯正用の夜つけるコンタクト」が話題になったようですが、皆さんはご存じでしたか?
眠るときだけのコンタクト 朝起きたらメガネ要らずに
コンタクトを夜つけて近視を矯正することは「オルソケラトロジー」と呼ばれています。私は眼科医なのですが、自分の病院ではオルソケラトロジーをやっていません。それゆえ、商売のからまない、患者目線と医者目線のバランスのとれた公平な記事を書いているのが良いところ、と考えてもらえたら嬉しいです。自分でいうなって感じですけどね(笑)。
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■オルソケラトロジーの原理
みなさん、目の中でレンズの役目を果たしているのは「水晶体」だと思ってらっしゃいませんか。もちろん正解ですが、むしろ表面の「角膜」が一番レンズの役目を果たしているのです。目は“ダブルレンズ構造”というわけです。角膜はドーム構造なのですが、あんな形でレンズになるのが面白いですね。ゆえに、この角膜を少しでもいじってやると、大きな屈折矯正効果が出せるわけです。
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角膜のカーブよりもフラットなコンタクトをつけて夜寝ると、そのレンズがまぶたで押し付けられて、角膜がややフラットに変形するので、その構造変化で近視を矯正しようというのがオルソケラトロジー、というわけです。
■オルソケラトロジーのメリット、デメリット
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オルソケラトロジーでうまく近視を矯正できると、昼間コンタクトをつける必要がないわけですし、手術でもないので、いつでもやめられます。正直、夢のような方法ですよね。自分も最初聞いたときは、「凄い!」と思いました。
「夜コンタクトをつけることによって、角膜に問題が起こったりしないの?」というのが、みなさんが一番気になるところだと思うのですが、自分は今まで大問題が起こった患者さんを見たことがありません(あちこちで大問題が起こっているケースでは、必ず何人かはうちの病院にもいらっしゃるので…)。もちろん管理が悪かったりするとまれに起こることはあるかもしれませんが、それは普通のコンタクトでもあることですし、ものすごく心配する必要はなさそうです。とはいえ、デメリットもあります。
実際に使用していた方によると、その方は近視が強い(裸眼で0.1以下)のですが、目には特に問題が出ないし近視は確実に矯正されるが、翌日の視力が日によって変わるのが一番困ったそうです。その方は仕事に支障があったため毎日眼科に行って、その日の度数にあわせたコンタクトをもらって入れていたそうです。おいおい何のためにオルソケラトロジーやっとんねん、という話ですよね(笑)。
他の使用者に聞いてみると、「いやいや、毎日快適です。毎日安定してよく見えます」とおっしゃいます。その方は近視が弱い(裸眼で0.5ぐらい)とのことですが、弱めの近視ならば少しの矯正で大丈夫なので、安定的なのでしょう。強い近視の場合は矯正すべき量が多いので、前者のような矯正量のブレが出やすいのでしょう。なので、弱めの近視ならば、特に良い適応になるかと思います。
強い近視ならば、安定した視力が要求される仕事、例えば運転手さんには難しいかも、ということになるのでしょう。逆に、運転はしないし、とにかく、ざっくりと裸眼視力が上がればうれしい、という人ならばとても良いですよね。近視の強い私自身がもし使うなら……、そうですねぇ。「明日はサッカーだから今日は入れて寝よう」とか、そんな使い方になるのでしょうか。コンタクトでサッカーをすると、砂が入ったとなればしばらく痛くて動けず、フォワードならオフサイドになりますからねぇ。バックなら“絶体絶命の危機になぜかゴール前で動じない男ひとり”、みたいな(笑)。スキーやスノボ、海やプールに入る前なんかも良さそうですね。
オルソケラトロジーで子供さんの近視が治るという説もありますが(一時的に矯正される、ではなくて、徐々に裸眼視力が上がっていく、という意味)、正直、私にはこの説の真偽はわかりません。純粋に医学的に考えると、あくまで都市伝説だと思うのですが……とはいえ否定できるほどの根拠も持ち合わせていません。なので、「“治った!”という方がもしいらっしゃったら教えてください!」という感じです。
いずれにしても、トライアルレンズがあるようですので、興味のある方は、自分に合うかどうかをしっかり試してから使用を考えられるのが良いと思います。参考になさってくださいね。