仕事で追い詰められたときでも自己肯定感を保つために必要なこととは?

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2017年08月01日 08:32  JIJICO

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過酷な仕事が続くと精神的にも下向きのスパイラルに陥りがち


2015年12月に当時24歳の電通若手社員が過労自殺した事件は広く報じられ、長時間問題等の見直しが話題になっています。電通に限った話ではありませんが、非常に過酷な現場にい続けることで「自己肯定感」が失われ、ちょっとした出来事にも傷つきやすくなったり失敗しやすくなったり、といった“下向きのスパイラル”に陥ってしまいがちです。


とはいえ、過酷な現場自体を変えることはなかなか難しいもの。そのようなときでも自己肯定感を保つために必要なことを考えます。


自己肯定感とは


自己肯定感は自尊感情、自己効力感とほぼ同義で使われる言葉で、「自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情」とされています。この自己肯定感が高いと、自分に自信を持つことができ、様々な物事に挑戦する意欲が高くなります。


日本人は総じて、自己肯定感が低いといわれています。国立青少年教育振興機構が日本、アメリカ、中国、韓国の高校生を対象として実施した自己肯定感に関する調査結果によると、自分自身についての考えとして「ダメな人間だと思うことがある」と回答した割合はアメリカ45.1%、中国56.4%、韓国35.2%に対し、日本は72.5%と圧倒的に高くなっていることからも、この傾向が伺えます。


知っておきたい「レジリエンス」


自己効力感と密接な関係にある「レジリエンス」という言葉をご存知でしょうか。元は回復力という意味の英語“Resilience”から来ており、心理学においては「困難なこと、強いストレスに直面したときに適応できる精神力・心理的プロセス」という意味で使われています。


例えば、ベトナム戦争をきっかけに生まれ、アメリカで1980年に精神医学の正式疾病として認められた「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」。トラウマとなる出来事を体験した後に、その記憶が原因で悪夢やフラッシュバック、不眠など心身に様々な変調をきたすPTSDは、1995年の阪神大震災、2011年の東日本大震災等を機に日本でも注目されつつあります。


アメリカの論文によると、同様の外傷ストレスにさらされたすべての人がPTSDになるわけではなく、おおよそ10〜20%程度だとしています。つまり出来事は同様でも、PTSDになる人とならない人がいることになり、その差として「レジリエンス」の有無が指摘されています。自己効力感は、レジリエンスを構成するひとつの要素として重要なものです。


自己効力感を保つために


コツとして、まず「楽観的に考える力」についてご紹介します。
何か嫌なことや追い詰められるようなことがあったときに「その原因は自分にある」と過剰に考え落ち込んだり自分を責めたり、「同様の出来事が今後も続くだろう、さらに広がるだろう」と拡大解釈したりする人がいます。


一方「周りの環境にも影響する、自分だけでは解決できない問題だ」「この出来事が理由なく、ずっと続くわけではない」と一時的・限定的なものとして解釈する人もいます。おそらく後者の方が、心が折れずに過ごすことができるでしょう。「私は悲観的な性格なんだ」という人も、性格を変えるということではなく、仕事上での「ものの見方」を今より少し楽観的にすることは十分可能です。「今は大変でも、いずれどうにかなる」と考えられるようになるだけで、随分変わってくるものです。


またストレスの源が「自分だけでどうにもできないこと」であれば周囲に相談するなど、助け・支えてくれる「ソーシャル・サポート」を複数持っておくことも大切です。ストレスも初めから大きかったわけではないでしょう。少しでもストレスを減らし、溜め続けないための自分なりの「気晴らし」実行も効果的です。ネガティブな感情を引きずらない工夫をすることも、自己効力感を保ちレジリエンスを鍛える上で有効といえるでしょう。



(浅賀 桃子・カウンセラー)

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