さて。citrus読者の皆さまは「マンションポエム」ってヤツをご存じだろうか?
「○○からの贈り物」「歴史が響き合う○○」「○○の未来と、○○の高みへ」「継承される○○」「静寂と躍動、伝統と進化」「時に磨かれた○○の邸宅地」
……などのキャッチコピーや
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「澄む(住む)」「邸(いえ)」「刻(とき)」「愉しむ(楽しむ)」「瞬間(いま)」
……などの当て字的な漢字の読ませ方を多用する、高級分譲マンション広告の独特な言い回しをこう呼ぶらしい。
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私のマンションのポストも、まるで「ゴミ箱代わり」と言わんばかりに高級分譲マンションのチラシが投函されており、一週間も放置すればパンパンの状態で、それらはすべて即(本物の)ゴミ箱行きとなるわけだが、たしかに言われてみれば、おぼろげな記憶として残っている仰々しい煽り文句には一定の法則があるような気がしなくもない。ちなみにたった今、ポストに入っていた恵比寿の新築タワーマンションのチラシを見てみると、
「恵比寿の空を美しく制する」
「光景となる象徴」
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……といった、日本語として正しいのか正しくないのかよくわからない、なんとなくラグジュアリーな雰囲気しか伝わってこない“ポエム”が慇懃に表紙を飾っていた。
で、そういった一種の“伝統芸”をパロってティッシュチラシへと落とし込む宣伝戦略に出たのがカップ麺の『どん兵衛』──仕掛けた企業はもちろん、この数年「攻めの広告」で名を轟かせるあの日清食品ホールディングスである。
メインコピーとなる
「美を讃えた麺の上で、
静謐のおあげに
出逢う」
……の下には、
「それは
おあげではなく、
そして
おあげでもある」
……とのサブキャッチ。
「希望小売価格180円」
「感覚的なもので、全ての人がそう感じるわけではありません」
「おつゆが溢れた時に使ってください」
「おつゆが飛んだ際にお使いください」
……などの補足文にも、パロディーが行き届き、なかなかに秀逸な出来となっている。
フジテレビが運営するニュースサイト『ホウドウキョク』の取材に、日清担当者は次のように述べている。
「どん兵衛の美味しさを改めて皆さまにお伝えするためには、未だ挑戦していない領域に踏み込む必要があるのではないか」という考えのもと、表現の豊かさを突き詰めていった結果、マンションポエムならぬどん兵衛ポエムなる品質表現にたどり着きました。
やはり、ちゃんとした説明になっているんだかなっていないんだか、よくわからない内容だ。なるほど、取材やユーザーからの質問に対する“模範解答”にまでパロディーは行き届いているのか。ここまで徹底してやってくださるなら、これはもう「あっぱれ!」とうなるしかない。
それにしても、「ティッシュチラシ」という古典的でお金のかからない手法にあえて目をつけ、そこからネットへの拡散を試みる戦略は、じつにクレバーでイマ風だと思う。大きく捉えるなら「炎上商法」の一種だとも解釈できるが、ジェンダー問題系やらエロ系やらナンタラハラスメント系やらの悪意的な劇薬による「炎上」ではなく、アイディア勝負一本の「炎上」なら、コンプライアンスとかにうるさいネット住民の歴々も温かい目をもって、せっせと拡散に努めてくださるのではなかろうか。とりあえず、アイディアはなんぼ捻り出してもタダなわけですし……ね?
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